前号の続きとして平成25~29年度に改正された項目について解説していきます。
経済産業大臣の認定を受けるための要件であった「経済産業大臣の確認」制度が廃止されました。手続きが簡略化されるため、税理士にとってもありがたいことです。
後継者要件のうち、被相続人等の「親族」であることとする要件が廃止となりました。少子化を考えれば、この点も使い勝手が良くなったといえます。
先代経営者が、贈与時において「役員」の場合であっても、特例の適用を受けることができるようになりました。
特例の適用を受ける会社が、株券不発行の会社であっても、一定の書類を提出することで、株券を発行しなくても担保提供することが可能となります。
現在の会社法では、株券不発行が原則となっているので、会社法の改正に合わせた措置ということでしょう。
(1)経営承継期間(申告期限の翌日以降5年を経過するまでの期間)の使用従業員数が変更されました。
改正前:毎年、贈与または相続開始時の雇用の8割以上確保すること
改正後:5年平均で贈与または相続開始時の雇用の8割以上確保すること
贈与・相続開始時の雇用の8割と固定されてしまうより、5年平均となったことで、贈与・相続開始後雇用数が下がってしまったという状況に対応できますね。
(2)「総収入金額がゼロとなった場合」の判定について、総収入金額⇒営業外収益及び特別利益が除外されます。
(1)納税猶予税額の計算過程で、被相続人の債務・葬式費用を相続税の課税価格から控除する場合には、非上場株式以外の財産の価額から先に控除するようになりました。
従来は非上場株式から債務・葬式費用を差し引くため、その分、納税猶予税額が少なかったのが、改正後は非上場株式以外の相続財産から差し引くことで、非上場株式に対する相続税に対する猶予額をフルに活用できます。
(2)特例の適用を受ける資産管理会社(資産保有型会社※1・資産運用型会社※2)に該当する場合、その会社が上場株式等を保有するときは、その会社が上場株式を保有していないものとして計算します。
(1)雇用の8割確保要件が満たさなくなった結果、猶予されていた税金を支払うことになったとしても、贈与税については延納の選択、相続税については延納または物納の選択が可能です。
(2)5年間の経営承継期間を超えて納税猶予の要件を満たせなくなった場合は、5年間の利子税は免除となります。
すなわち、利子税を支払わなくて済むということは、本来支払わなければならなかった税金を5年間待ってもらったことと同じ事ですから、納税猶予制度を適用した一定の効果は得られるはずです。
改正前は事業承継税制を適用した納税猶予額の計算は暦年課税しか適用できませんでしたが、改正後では相続時精算課税を適用できるようになりました。
この点については、詳しい説明が必要になると思いますので、次号で暦年課税制度と相続時精算課税制度の違いを解説いたします。
遺言は自分の死後の財産の帰属先についての個人の希望を表明したものだが、遺留分に配意して作成しないと、遺留分の減殺請求をされる場合がある。とはいっても、個人の思いや財産の性質から民法の規定に沿った分割することはまずできない。
遺言には財産の承継の仕方(法定事項)のみを書けば事は足りるのだが、何を書いても自由である。上記に掲げたのは単なる私の思い付きの駄文だが、「付言事項」と言って、財産の帰属を定めた理由や、感謝、希望など、家族に対する気持ちを遺言に盛り込む法定外の事項である。(中略)の部分に具体的財産帰属事項が記載されているものと思って下さい。
せっかく遺言を作成するなら今まで口に出して伝えられなかった思いを付言として、紙に残したい。遺言内容に多少不満な相続人もそれを読んで納得するかもしれないという効果もあるが、それは副次的なことに過ぎない。
「付言なくして遺言なし」とも言われる。付言事項はそれまで言えなかった自分の思いを家族に伝える最後のチャンスである。
心に沁みる付言事項を綴った遺言は家族に対する最初で最後のラブレターとも言われる所以でもある。
(次号に続く)
税務総合戦略室便り 第96号(2017年11月01日発行分)に掲載
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