留学生や外国人の技能実習生の所得税を考える
先日、秀明大学において租税法の講義を行いました。
これは、弊社の活動の一つとして毎年行われており、弊社のメンバーが分担して講師を務めているものです。
その大学では海外からの留学生も多く、当講座にも多くの中国・ベトナム等の学生が受講していました。
租税法の講義なので、憲法、法律、政令、省令、通達の意義・目的について説明するとともに、法律の上位に位置するものとして租税条約についても説明しました。
ここで、租税条約について簡単に説明します。
各国には、それぞれの歴史に基づき独自の税制があります。人や法人の活動が、その国だけでなく外国にまで及ぶと双方で課税される二重課税等の問題が発生するため、調整のツールが必要であり、租税条約はそのために存在しています。
租税条約は、日本国と中国、日本とベトナムといったように2国間で定めます。したがって、締約時における2国間の状況や都合によって条約の内容が影響されるということを聞いています。
今回の租税法を受講する留学生の中に日本でアルバイトをしている人を仮定します。その場合に、アルバイト先から支払われる給与に対しては、日本国内で生じた所得であるため日本で課税対象になります。留学生については、通常、日本国の居住者であると推定されるので、通常の所得税が源泉徴収されます。
ただし、日中租税条約においては、その留学生が中国人の場合で、次の要件を充たしている場合には所得税が免除されることになっています。
この免税措置については、その中国人留学生が日本の居住者であるか非居住者であるかを問わず、また滞在期間・金額の制限もありません。
適用の手続きは、給与を支払う事業者が、留学生から「租税条約に関する届出書(様式8)」及び学校の発行する在学証明書の提出を受け、これを事業者の所轄税務署に提出することによります。
日越租税条約では次のように規定されています。
①~③(日中租税条約とほぼ同じです。)
④ただし当該給付が日本国外から支払われるものである場合に限る
このように、日越租税条約においても、日中租税条約と同様に学生の免除を規定しているのですが、その免除は日本国外で支払われたものに限定しているのです。
したがって、日本国内で支払われる給与は、免除の対象外になる訳です。
いきなり結論を言えば、課税理論上不合理ではありません。
その理由は、二国間で租税条約を定める場合の指針となるOECDによる「条約モデル」では、日越租税条約のとおり定められているからです。つまり基本に忠実に規定されていることになります。
結局、中国側に特典を与えていることが、その原因という訳です。
これらの国々については、締約時において留学生はもっぱら日本人であったと考えられますが、それぞれ独自の規定になっています。
ここで結論、租税条約は力関係ですね。
税務総合戦略室便り 第91号(2017年06月01日発行分)に掲載
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