前回では国税の路線価額と相続税や贈与税に用いる路線価額と公示価格との価格水準について検討しました。
今回は、それについて実際に計算をしてみることにします。そうすることで、土地評価が機械的にはできない場合があることを理解していただきたいと思います。
まず、評価する土地については、次の土地とします。
なお、この土地は実在する土地ということではなく、筆者の想定であることにご留意願います。
路線価により相続税評価額を算出します。
路線価はそのまま計算するのではなく、評価する土地の奥行距離等により一定の減額を行います。
正面路線価×奥行距離120mに係る補正率=相続税評価額
145,000円/㎡×0.80=116,000円
次に、角地の場合は、1路線のみに面した土地よりも評価が高くなります。
算出方法は、側方路線価に一定の率(3%)を乗じた額を正面路線価に加えます。
計算した結果は次のとおりです。
正面路線価+(側方路線価×奥行補正率×側方路線加算率)=相続税評価額(※角地)
116,000円+(135,000円×0.81×0.03)=119,280円/㎡
この土地は矩形ではなく台形ですので、不整形地として補正を行います。仮に、この土地を包含する四角形を想定した場合の当該土地の面積を11,040㎡としますと、いわゆる「陰地割合」は20.56%になります。
計算式は次のとおりです。
(想定整形地の面積-不整形地の面積)÷想定整形地の面積=陰地割合
(11,040㎡-8,770㎡)÷11,040㎡=20.56%
普通住宅地区における750㎡以上の面積の不整形地で、想定整形地に対する陰地割合が20%以上の場合は、「不整形地補正率」が0.98となり、整形から2%を減額することになります。
その結果、単価は次のとおりになります。
119,280円/㎡×0.98=116,894円
一定の面積以上の土地を開発する場合には、都市計画法や条例により道路や公共公益的施設用地を確保することが義務付けられていて、その場合には、これまでの減額措置に代えて広大地補正を行うことができます。
ただし、評価する土地がマンションや大型店舗が連たんしている地域に所在する場合は、広大地の適用はできないこととされています。
本件においては、前提として、その土地の利用を、学校用地等を見込んでいるので、ここでは広大地補正を適用しないこととしました。
単価を算出したら、これに面積を乗じて合計評価額を算出します。
116,894円/㎡ × 8,770㎡=1,025,160,380円
相続税評価額を0.8で割り戻して公示価格水準の価額を算出します。
1,025,160,380円÷0.8= 1,281,450,475円
(注意)公示価格水準とはいっても、これはあくまでも路線価を活用した簡便法ですので、実際に税務計算上使用する場合には、税理士にご相談ください。
これで終わりにしますと尺が足りないようなので、ここで、特殊な減額要素を考えてみましょう。
《追加要素》土壌汚染地である場合
国税庁の取扱いでは、課税時期において土壌汚染の事実が判明している場合は次のとおり評価することとしています。
ここで紙面が尽きました。
補足として、例えば建設廃棄物やゴミが大量に埋蔵されている土地についてもこの方法に準じて評価するのが原則と考えられます。
最後にくどいようですが、今回の事例は実在する土地の評価ではなく、全て架空のものであることを申し添えます。
税務総合戦略室便り 第90号(2017年05月01日発行分)に掲載
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