オーナー社長と主宰される法人は切っても切れない縁にあります。
その会社に関与する税理士は、当該法人の毎期の決算書を作成することはもちろんのこと、将来発生する相続税をも想定しながら、オーナー社長と関連する勘定科目を注意深く見守って、必要に応じ対症療法を施していくことが必要だと思います。
そういう意味では、自社株にかかる事業承継問題もさることながら、オーナー社長の会社に対する貸付金も将来の相続問題となる代表格といえます。
弊社では、セカンドオピニオンの立場から、法人税申告書、財務諸表、固定資産税台帳、総勘定元帳、原始記録(請求書、領収書、契約書など)、定款、土地建物の固定資産税通知書、議事録、株主名簿など様々な角度から「どこに問題が内在しているか」を丹念に拾い上げていきます。
法人担当者は、国税局及び税務署調査による否認リスクの観点から検討します。
資産税担当である私は、オーナー会社の株価算定のための基礎資料、株主構成による今後の問題点、個人法人間の勘定科目などに着目します。
ある会社のオーナー社長が主宰する法人決算書の中身をチェックしたところ、上表のような貸借対照表となっておりました。
内訳書を拝見しますと……。
金額の多寡こそありますが、よく見かける決算内容です。
会社の設備投資のためかなりお金をつぎ込まれたようです。この点がサラリーマン社長とオーナー社長の大きな違いです。会社はご自身の分身であるため、資産をなげうってでも会社を守る、もしくは大きくされようとします。
問題なのは貸付金が原則、全て将来の相続財産となるということです。貸付金は「元本の価額と利息の価額の合計額」で評価されます。
相続時において、会社の営業成績が落ち込んでいたとして「その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」は「貸付元本に含まない」としていますが、なかなかそのハードルが高いものとなっています。
①会社更生手続きの開始②民事再生法による再生手続き開始③6カ月以上の休業――など。
また相続税は、現金一括納付を原則としています。貸付金が会社からすぐ回収できれば良いのですが、億単位となると、会社のキャッシュフローを大きく圧迫しかねません。
その結果、相続人が納付資金のやりくりに奔走することは自明の理といえます。税理士は今の会社の現状だけではなく、物事を複眼で捉え、時にはブレーキをかける役目を担い、アドバイスしていかなければなりません。
貸付金を解消する方法はいくつか考えられます。
問題はいつから解消し始めるかです。オーナー社長が80代と高齢の場合、解消しきるのは困難です。やはり、早い段階で手を打つべきだと思います。
(次号に続く)
税務総合戦略室便り 第90号(2017年05月01日発行分)に掲載
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