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国際課税の話(その9)

第88号(2017年03月01日発行分)

立石 信一郎

前回に続き、香港の話ですが、まず香港法人の実態確認の話しから始めます。

香港法人の実態確認について

香港においては、法人は、登記している住所地に、社名を記した看板を掲げることが求められています。したがって、ペーパー・カンパニーであっても看板を掲げる必要があり、ペーパー・カンパニーの場合、通常登記上の住所地となっている会計事務所等の玄関に社名の小さなプレートが掲げられています。
 大手の会計事務所等の場合には、数百もの法人のプレートが掲げられていることもありました。ただ、ABCのアルファベット順に並んでいるため、目的とする会社のプレートを確認するのは比較的容易でした。2年間も駐在していると、法人の住所地(ビル名と階数)を見るだけで、どのような会計事務所があるのかわかり、ペーパー・カンパニーであると容易に想定できるようになりますが、住所地に臨場しての確認は必ず行っていました。
 法人の住所地がセキュリティーのしっかりしているビルやマンションである場合もありますが、そのような場合でも、殆どの場合、テレビドラマさながらに、入居者が入るタイミングで平然と一緒に入るようなこともしていました。また、ガードマンに呼び止められたとしても、日本語で適当なことを言っていれば、日本人はおかしなことをするはずがないと思っているのか、入るのを許してもらえました。当時はテロ等の事件もなく、今考えれば、いい時代だったのかもしれません。
国税庁から、香港法人の実態確認の指示があった場合、このようにして入手した、法人の登記事項や法人の実態に関する情報を報告していましたが、例えば、午前中に国税庁から実態確認の依頼があれば、香港自体が狭い国なので、当日中に法人登記の入手と実態の確認を行い、報告することも可能でした。

調査官の海外派遣について

以前、税務調査自体が主権の行使であり、日本の調査官が海外に行って、税務調査を行うことは主権の侵害にあたることからできないと説明しました。
 しかしながら、税務調査ではなく、帳簿の確認等の限定的な事項を行うことについてのみ、多くはありませんが、日本の調査官の受入れを認めている国があります。香港もその一つでした。ただし、臨場できる法人は、日本法人と同一視できる支店や100%子会社のみであり、しかもその法人本社の了解が得られるという条件が求められていました。
 この場合でも、香港法人等の現地人スタッフに、日本の調査官が来ているとの情報が洩れることのないように、日本人スタッフのみによる対応をお願いしていました。
私自身も調査官に同行し、現地法人等に臨場していましたが、調査官に対しては、日本の調査官が外国でできることには制限があること、及び問題が起きた場合には、調査官の海外派遣という制度が崩壊する可能性があることを十分に注意していました。

調査官との思い出について

香港は、日本から派遣される調査官の人数が多く、2年間で数十人の受け入れを行っていました。調査官と夕食を一緒にすることも多く、折角だから食事を楽しんでもらおうと、食事する場所についてはいろいろ研究しましたし、自分も大いに楽しみました。
 香港に行く前は、漠然と中華料理というイメージしかなく、特に好きでも嫌いでもありませんでしたが、実際には広東料理、北京料理、四川料理、上海料理、潮州料理などと多種多様な料理があり、その美味しさに、それまで持っていた中華料理のイメージが覆され、ファンになってしまいました。香港で中華料理を食べすぎたせいかどうかはわかりませんが、帰国してから受けた人間ドックで判明した、胆石という思い出を現在も体の中に抱えています。
調査官の中には、記念として、香港の銀行に口座を作り、預金通帳を持って帰りたいという方も少なからずいました。現在では考えられませんが、当時は、パスポートさえ提示すれば、銀行口座を簡単に開設することができました。

税務総合戦略室便り 第88号(2017年03月01日発行分)に掲載

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