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加算税の改正とパンドラの箱

category: 税務調査
第87号(2017年02月01日発行分)

執筆者6

税務調査での修正申告等に対する「加算税」の制度が改正されました。本年1月以降に法定申告期限が到来する国税から適用されています。
そこで今回は、この加算税について考えてみます。ただし、加算税といっても多岐にわたるため、ここでは、法人税等各税において税務調査があった結果、修正申告をした場合の、過少申告加算税と重加算税について検討します。

 

加算税とは

税務調査の結果、問題事項が指摘され、正しく計算すると当初の申告額よりも税金が増えたために税金を追徴された場合には、その追徴された本税とは別に加算税がかかります。
加算税の種類は、いくつもありますが、修正申告の場合には「過少申告加算税」が本税の10%か15%かかります。また、当初申告に「隠ぺい又は仮装」があった場合には、過少申告加算税に代えて「重加算税」が本税の35%か45%かかります。

加算税についての改正

〈改正前の取扱い〉

国税当局が税務調査を行う場合には、納税者に対して原則として事前通知をすることが義務付けられています。
 この場合、調査の事前通知後でも、更正の予知(調査結果の説明等)の前の修正申告であるならば、過少申告加算税はかからず、もとより過少告加算税に代えて課税する重加算税もかからないこととなっていました。
 この制度については、当局によると、事前通知直後に多額の修正申告を行うことにより加算税の賦課を回避している事例が散見されていたとのことです。

相続税調査の臨宅時冒頭に税理士が修正申告を申し出た経験

筆者の経験でも、調査の冒頭で税理士から修正申告の旨を宣言されたことがあります。
 銀行の被相続人名義の預金が所得に比較し過少であると思われたため調査を実施したのですが、臨宅調査の冒頭ですから、当然のこと調査結果の指摘はしておりません。
 筆者にしてみれば、不正を把握しようとして調査に臨んだのですが、冒頭でくじけてしまいました。義憤にかられながら上司に復命した記憶が思い出されます。

〈改正後の取扱い〉

今回の改正は、当初申告のコンプライアンスを高める観点から、調査の事前通知から更正等の予知(調査結果の説明等)までの間については、更正等の予知後の通常の過少申告加算税よりも一段低い水準の加算税(5%・10%)がかかることになりました。
 この改正により、先程のように、当初申告はバレ元で申告をしておいて、調査にならなければ万々歳、調査になったら、調査結果の通知前に修正申告を出せば、延滞税はしょうがないにしても加算税は逃れられる、といった手口は、従前よりもある程度は減るかもしれません。

改正趣旨についてこんな説明が

改正について当局から次のような説明がされています。

上記の「通常の加算税よりも一段低い水準」とする加算税の賦課については、調査通知により、その調査による更正等が行われる可能性が発現するものの、上記の加算税が更正等の予知に至る前の自発的な修正申告等を促す段階において課されることを踏まえたものです。(財務省ホームページ平成28年度税制改正の解説より)

何度読んでもスーッと入ってこないのですが、若干の違和感を感じております。

自主修正にも重加算税の可能性が

以上、縷々書きましたが、調査の事前通知から更正等の予知(調査結果の説明等)までの申告でも過少申告加算税がかかるということは、それに代えて重加算税もあり得るということになります。これについては、今後の事例が注目されることになるでしょう。

パンドラの箱

以上のように「ムチ」尽くしの改正ではありますが、制度を明確化することで、これまで、そういうことを遠慮していたが、今後はビジネスライクな行動に走る人が出るなど、パンドラの箱を開けたことになるのか注目されるところです。

税務総合戦略室便り 第87号(2017年02月01日発行分)に掲載

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