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国際課税の話(その8)

第87号(2017年02月01日発行分)

立石 信一郎

今回から2回にわたり、私が2年間長期海外出張者として駐在していた、香港の存在やそこでの経験などについて、お話しをしたいと思います。

香港の税制について

「パナマ文書」の問題等を通じ、様々なタックス・ヘイブンに注目が集まっていますが、タックス・ヘイブンとしての香港は、法人設立の手軽さ、税メリット、中国との取引の窓口等の観点から利用価値は依然高く、実際の税務調査においても、よく香港法人との取引等に直面する機会がありました。  香港は、法人税率が16・5%(個人の所得税率は17%)と低い水準にありますが、タックス・ヘイブンとしての存在意義は、キャピタル・ゲイン(譲渡益)や配当所得などに対する課税がないほか、最大のメリットは香港国外で得た所得(「オフショア所得」といいます)に対しては課税しないという点にあります。
 例えば、香港法人が、ヨーロッパから商品を輸入し、日本に対してそれを輸出した場合、その差額である利益に対しては、香港税務局に申請することにより、課税所得の対象から除かれることになります。オフショア所得に対して課税しないのは、法人が海外取引や支店形態での進出を行った場合に生ずる国際的な二重課税を排除するために、「国外所得免除方式」を採用している(日本は「外国税額控除方式」を採用)ためです。
 これにより、香港法人は、オフショア所得、譲渡益、配当所得等を会計上利益として認識しても、税務申告においては、課税所得から除くことができるため、法人の利益に対する実際の税金が極端に少なくなるケースもあります。

香港法人との取引等の検討について

日本法人が、香港子会社との間で取引を行っているような場合には、①香港子会社の利益を日本法人の利益に合算する「タックス・ヘイブン対策税制」や②香港子会社との取引価格の妥当性を検討する「移転価格税制」の観点から検討されることもあります。
また、税務調査において、手数料等を支払っている香港法人の実態や役務提供の内容等に疑義が生じた場合には、香港法人の登記事項や事務所の状況等の実態を、長期海外出張者に確認してもらうことができます。

香港法人の登記事項等について

香港で法人を設立する場合には、法人名として、英語で「Ltd.(Limited)」及び中国語で「有限公司」を社名に付ける必要があり、これにより法人と確認できた場合には、香港会社登記局(Companies Registry)に行き、株主、役員等の法人登記に関する情報を入手していました(現在では、インターネットによる入手も可能なようです)。株主等がノミニー(nominee:名義人)である場合にはその登記がされていることもあり、また株主が香港法人である場合には、さらにその登記事項を調べることになります。
 香港で現地法人を設立する場合に、「シェルフカンパニー」を利用することがあります。「シェルフカンパニー」とは、香港の会計事務所、会社設立代行会社等が、仮の法人名、株主、役員、定款等に基づき、事前に設立し、事務所の「シュルフ(棚)」に準備している法人のことです。この法人を買取り、法人名や株主等の変更を行うことにより、短期間に事業を開始することができます。香港法人がいつから事業を開始したかを確認する場合、通常は法人の設立年月日が参考になりますが、「シェルフカンパニー」と思われる場合(例えば、法人名として「Nominee no.1 Ltd.」のような分かりやすい法人名を使っているケースも多いです)は、法人名等の変更以後と考えることができます。
なお、名称に「Co.(Company)」又は「公司」を使っている場合、個人事業者の屋号であると考えられます。この場合は、香港税務局(IRD:Inland Revenue Department)に行き、申請を行うことにより、2、3週間程度で商業登記(基本的な申告者の情報)を入手することもできました。

なお、これらの情報は、私が香港に駐在していた当時の情報が基となっていますので、その後変更等が行われている可能性があるかもしれませんのでご留意下さい。

税務総合戦略室便り 第87号(2017年02月01日発行分)に掲載

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