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非居住者が国内で金を売却した時の税金

第84号(2016年11月01日発行分)

執筆者3

1.金は輝いている

金価格はここ8年高値を維持しており、原油・石炭や銅といった商品の取引価格が大きく下落したのとは異なり、異彩を放っています。
 何よりも括目すべきは、金価格はドル/トロイオンスで見ると長期的には値上がりを続けているという事実です。金輸入が自由化された1973年には平均値97ドルであった価格は2012年になると1668ドルと17倍にもなった=金投資は長期(国際)投資適格なのです。
 ただし、円ベースで見ると為替変動の影響もあり、乱高下が繰り返されています。私が始めて国税局調査部に勤務した1980年頃、金価格が突如高騰したことを覚えています。1g千円を上回る程度の価額であったものが、3千円台まで跳ね上がりました。その後、円高の影響もあって、再び元の価格に収まっていったのを鮮明に覚えています。
そして、女房に請われて、1g千円を上回る程度の価額となっていた金製品をプレゼントしたことが、今では思い出となっています。

2.金を巡る問題取引

金価格がリーマンショックを機に高騰し、高値を付け続けている今、消費税の無い国等(例えば香港)から正規の輸入手続きを経ず、不正に金地金を日本に持ち込んで売却し、消費税8%を含めた代金を受取り、海外にトンボ帰りするビジネスも行われていると囁かれています。勿論、金売却に係る所得を日本では申告しませんから税金逃れとなっています。

3.非居住者からの相談事例

先日、南米に在住する日系人(非居住者)から、「個人が金を売却した場合、売却益の日本における課税(税金負担)はどうなるのか?」についての相談を受けました。
 日本人の南米移民は19世紀の末に始まります。その方は、戦後の生活困難な時代に開拓民として南米に渡りました。苦労を重ねた後、街(都市)に出て事業で成功しました。
 30年ほど前、日本に帰国した折に日本で金地金を購入したそうです。その金を日本の銀行の貸金庫に預けておいたのですが、この度、売却しようと思い立ち某貴金属業者を訪ねたそうです。そこで、売却益には税金がかかると説明を受けたが、非居住者にも納税義務があるのか納得がいかないし、どのようにして税金を納めるのかもわからないので、相談に来たということでした。
 質問のうち、(1)非居住者でも納税義務はあるのか?
 日本の銀行の貸金庫にある資産を日本で売却(譲渡)した場合、その直前において「日本国内に所在する財産」を譲渡したことになります。そうすると、発生した譲渡所得は国内源泉所得となり、たとえ売主(譲渡者)が非居住者であっても納税義務が発生します。
 非居住者であれば、キャピタルゲイン非課税、恒久的施設(PE)が無ければ課税なしという原則を耳にしたことがあるので、課税は無いと勘違いしたのかもしれません。
 次に(2)いつどのような手続きで納税するのか?
 非居住者への課税は、原則として源泉徴収のみで課税関係が完結する源泉分離課税が基本となっていますが、金地金の売却益については、源泉徴収の対象とはされていません。
 納税は確定申告により行うことになります。だから、前述のように申告せずに出国してしまう人もいます。
 金地金を売却した場合の所得・所得税はどのようにして課税、計算されるのかというと、原則(事業所得や雑所得とされる場合を除き)、その他の譲渡所得として「総合課税」されます。このため、「分離課税」とされている不動産や株式の譲渡所得とは異なり、累進課税が適用されてしまうので、最高所得税率は45%と不利となっています。なお、非居住者ですので、住民税はかかりません。
 さらに、損失が発生したとしても、他の所得との「損益通算」は認められてはいません。
 ただ、長期所有と短期(5年以内)所有とでは、税額の計算方法に違いがあります。
 5年超の長期譲渡の場合、譲渡所得の二分の一が他の所得に合算され、総合課税されるので有利となります。

税務総合戦略室便り 第84号(2016年11月01日発行分)に掲載

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