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国際課税の話(その4)

第83号(2016年10月01日発行分)

立石 信一郎

今回は、国税庁で、相互協議のほかに担当していた、「租税条約」に基づく情報交換の話しです。

租税条約とは

租税条約は、米国との間のものであれば、正式には「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国との間の条約」といいますが、略して「日米租税条約」と呼ばれたりします。租税条約の目的は、その正式名称にもあるように、①二重課税の回避と②脱税の防止の二つです。
 二重課税の回避については、以前の移転価格の話の際に触れたように、二重課税を解消するための税務当局間による協議の規定がありますが、そのほかに、利子、配当、使用料、事業所得などの所得ごとに、どちらの国に課税権があるかその調整を行ったりする規定などがあります。
 脱税の防止については、国際的な脱税及び租税回避に対処するため、外国の税務当局との間で情報の交換を行う根拠となる情報交換規定などがあります。

情報交換とは

情報交換には、「要請に基づく情報交換」、「自発的情報交換」及び「自動的情報交換」の3種類があります。
 ①「要請に基づく情報交換」は、納税者の調査において、国内で入手できる情報では事実関係を十分に解明できない場合に、外国の税務当局に必要な情報の収集・提供を要請するもので、②「自発的情報交換」は、納税者の調査において入手した情報で、外国の税務当局にとって有益な情報を自発的に提供するものです。また、③「自動的情報交換」は、法定調書から把握した非居住者等への配当、使用料、不動産所得等に関する情報を非居住者等の居住する外国の税務当局に提供するものです。
 国税庁が発表した、平成26事務年度に日本が行った実績は、それぞれ、①526件、②317件及び③約13万7千件となっており、「自動的情報交換」が圧倒的に多くなっています。

情報交換の記憶

この情報交換の事務については、いろいろな思い出があります。
 外国の税務当局に対して、「要請に基づく情報交換」の依頼を出す場合には、国税局等から申請のあった文書を英語に翻訳し外国の税務当局に送付していましたが、当時の時代背景もあり、求める情報の多くは、日本法人が相手国の法人にコミッションを支払っているが、相手先においてコミッションを実際に受け取って、税務申告しているかなどを調査してもらいたいという内容のものでした。
 英語への翻訳には苦労しましたが、外国の税務当局からの回答は英語ばかりではなく、フランス語、イタリア語、スペイン語などがありました。翻訳の予算がなく、また、内容が個別の納税者の情報であることから、翻訳の外注にも出せず、大蔵省の図書館に行って各言語の辞書を借り、辞書を引きまくって翻訳していました。
 ただ、依頼内容に対する回答であるため、おおよその内容は予測でき、内容がわかれば、すべて正確に翻訳する必要はなかったので気は楽でした。
 「自動的情報交換」については、国税局等から送られてきた、受取人が非居住者である法定調書等を国別に仕分けをして、各国の税務当局に郵送していました。米国については、当時赤坂の米国大使館の中に米国内国歳入庁の東京事務所があったのでそこに持って行くことになっていました。資料の入った大きな段ボール箱を持って行った時に、手がふさがっていたため、親切に中から大使館の玄関ドアを開けてくれた外国人にお礼をいいましたが、よく見ると当時のマンスフィールド駐日大使でした。その後、しばらくはその話を皆に自慢していました。

現在の国際協力の状況

現在、日本が締結している租税条約の数は、53条約(対象国は64ヶ国・地域)まで増えてきており、また、近年は、ケイマン諸島や英領バージン諸島等のタックス・ヘイブンなど10ヶ国・地域との間でも情報交換を目的とした、「情報交換協定」が締結されてきており、それ以外にも様々な枠組みで、国際的な脱税に対処しようという国際協力のネットワークが急速に拡大してきています。

税務総合戦略室便り 第83号(2016年10月01日発行分)に掲載

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