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オーナー会社の株式評価 -類似業種比準価額方式を考える-

category: 自社株
第80号(2016年07月01日発行分)

執筆者6

弊社のお客様につきましては、主宰されている会社の株式評価を必ず行うことになります。この非上場会社の株式の評価は、通常、国税庁の通達に基いて算出することになるのですが、具体的には、「純資産価額」と「類似業種比準価額」を算出して評価します。
 今回は、その類似業種比準価額について考えます。
 類似業種比準価額により非上場株式を評価する方式とは、その評価会社の事業内容(業種)が類似している上場会社の配当金額、利益金額そして純資産価額(帳簿価額)の3要素と比準して株価を算出する方法をいいます。
 具体的には、評価会社の総資産額・取引金額・従業員数から、評価上の会社の規模を大会社・中会社・小会社に分類して、大会社は類似業種比準方式で、小会社は純資産価額で、そして中会社は類似業種比準価額と純資産価額をブレンドして評価するのが原則となっております。

標本会社の決算数値等により作成する 類似業種比準価額

それでは、上場会社の配当金額、利益金額、純資産価額(帳簿価格)はどのように決められるのでしょうか。
 簡単に説明しますと、国税局の調査部で所管している上場会社のデータを集計することで作成します。その対象法人のことを「標本会社」といいます。
 この標本会社は、金融商品取引所に株式を上場している全ての内国法人を対象としておりますが、次のような会社は標本から除かれることになっております。

  • ①その年に上場廃止が見込まれる会社
     その年の毎日の株式の終値の各月の平均額を12月まで算出できないことが理由です。
  • ②前年の中途に上場した会社
     前年の平均株価が算出できないことが理由です。
  • ③1株当たりの配当金額、1株当たりの年利益金額及び1株当たりの純資産価額の3つの要素のうち、いずれか2以上がゼロかマイナスである会社
     類似業種比準方式の計算において、3つの要素のうち2以上の要素を欠く会社を含めて統計することが適当でないことが理由です。
  • ④資本金等の額がゼロ又はマイナスである会社
     標本会社の株価・1株当たりの配当金額・1株当たりの年利益金額及び1株当たりの純資産価額は、1株当たりの資本金等を50円とした場合の金額として計算するので、標本会社の資本金等の額がゼロ又はマイナスである会社を含めることが適当でないことが理由です。
  • ⑤設立後2年未満の会社
     1株当たりの配当金額は、直前期末以前2年間における剰余金の配当金額の平均額で求めるのですが、設立後2年未満の会社は2年間の配当金額の平均の計算ができないことが理由です。

 

類似業種比準方式は業種の特定がポイント

次は、類似業種比準方式のポイントである業種の特定についてです。
 オーナー株式の評価を上場標本会社の数値に比準して評価額を求めるのですから、同じ業種目の上場標本会社の数値を使用しなければなりません。
 業種を特定する作業は次のようになります。

  • ①総務省の「日本標準産業分類」の中から該当する業種を見つける。
     この場合に、大分類・中分類・小分類のどれに当てはまるかを確認することが重要になります。
  • ②①で確認した業種が株式評価上のどの番号になるのか確認します。
     具体的には、次の国税庁の情報により行います。
     「国税庁HP」→「税について調べる」→「その他法令解釈に関する情報」→「財産評価」→「類似業種比準価額計算上の業種目及び類似業種の株価等の計算方法等について(情報)」
  • ③国税庁の通達で該当番号の株価等を拾い、計算します。

 

業種の特定が容易でない場合も

 

例えば、不動産業とか特定の製品の製造業とかであれば、上記②の確認するまでもなく、③で特定できます。
 しかし実際には、日本標準産業分類による業種の特定に手こずる場合が少なくありません。
 特定する業種により、計算結果が大きく違ってくるので、かなり神経を使うところになります。
 ということで、日本標準産業分類の充実を切に望むところであります。

税務総合戦略室便り 第80号(2016年07月01日発行分)に掲載

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