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賃貸建物を巡る相続税対策を考える

第78号(2016年05月01日発行分)

執筆者6

私は、オーナー株式や不動産等の承継等の資産課税関連のコンサルや相続税の申告書の作成の仕事を主に行っております。そのため、不動産に係る税務上の様々な局面に遭遇しております。
 そこで、今回は個人が賃貸している建物と敷地を所有している場合の将来の相続税の節税について考えてみましょう。

建物の賃貸は節税の王道 ―古典的方法だが簡単で効果大―

本題に入る前に、その前提である建物の賃貸が、相続税の節税上、いかに効果的かということに触れなければなりません。
 相続税を算出する場合の財産の評価額を相続税評価額といい、建物の相続税評価額は、固定資産税評価額になります。そして賃貸している建物の場合は、その固定資産税評価額の70%で評価します。
 土地については、「貸家建付地」となり、例えば、路線価が100千円/㎡、借地権割
合が60%の場合には、土地の敷地の相続税評価額は次のようになります。
 100,000円×(1-0.3×0.6)=82,000円/㎡
 一方、賃借人には、反射的な財産が通常発生しません。これは土地自体を賃貸する場合とは大いに異なるところです。したがって、オーナー会社に建物を賃貸している場合には、借家権等を株式の評価に盛り込む必要がないことになります。
 これが、土地自体の賃貸借の場合には、会社の株式評価上、借地権を資産に計上する必要があり、当然に株式評価が高くなります。

賃貸している建物を子に贈与する方法あり

本人が賃貸中の建物とその敷地を所有している場合に、次の方法があります。
①から③まで連続することが条件です。

①建物のみを子に贈与
敷地は親の名義のままで、賃貸借でなく無償使用
②建物の賃借人は、そのまま継続
家賃は、受贈者(子)が受け取り、不動産所得を申告
③その後の相続で建物所有者が相続
この場合、その敷地の相続税評価は貸家建付地になります。
 通常、個人間で無償使用(使用貸借)した場合、賃貸借と異なり借地権は発生せず、相続では更地評価になります。しかし、上記の場合には、建物の贈与の従前から親が建物を賃貸しており、敷地は貸家建付地の状態になっています。そして、子が贈与を受けた後も建物の賃貸借契約を継続して相続まで至れば、その土地の相続税評価は更地評価ではなく、貸家建付地評価になるという仕組みです。
《ポイント》
 建物の贈与後、建物の従前の賃借人が立ち退いた時点で、贈与前の貸家建付地状態が更地状態になってしまいます。
 アパートのように間貸ししている場合には、敷地の内、対応する部分が更地になります。これでは、不安定であり心配が尽きないことになります。
 これを防止するには、オーナー会社に一括貸しすればよいのです。
《メリット》
 土地の評価が安くなるほか、キャッシュフローを生前中に子に移転させることができます。

建物をオーナー会社(赤字法人の場合)に売却し、敷地を賃貸する方法

建物のみを売却するスキームです。
 売買価格は、未償却残額を時価としてよいでしょう。
 土地を賃貸借しますが権利金の授受は行いません。
 また、地代の額は通常の額とし、税務署に「土地の無償返還に関する届出書」は提出しません。
《その結果こうなります》
 権利金なしで借地権が法人に設定されるので、法人は借地権相当額の受贈益が計上されます。そのため、このスキームは赤字法人であることが条件になります。
 建物を売却した個人については、譲渡価額が未償却残高であるため、譲渡益は発生しません。
 また、借地権を法人に無償で設定しても、「資産の移転」でなく「設定」であることから、個人が法人に対して時価の1/2に満たない価格で資産を移転した場合に時価で売ったとみなされて課税される、いわゆる「みなし譲渡」の適用はありません。
 したがって、個人には譲渡所得は生じないことになります。
  このスキームの結果、その後の相続税では、建物の敷地は底地評価となります。
 法人に設定された借地権と建物は、法人の資産として同族会社の株式評価上の資産となりますが、個人が所有するよりも評価額を圧縮することが可能です。
 以上、紙面が尽きましたので続きは次回で。

税務総合戦略室便り 第78号(2016年05月01日発行分)に掲載

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