今号では、預金取引からできる相続税申告もれ未然防止方法についてお話します。
はじめに、金融機関は、現在の私たちには、欠かすことができないものとなっています。入金においては、給料、配当金、不動産収入、土地の売買、満期保険金・死亡保険金の受け取り、支出においては、飲食費、保険金、住宅ローン、家賃、公共料金、教育関連費用など、例を挙げれば枚挙にいとまがありません。家庭生活にかかるほとんどの収支が反映しています。
会社は帳簿がありますが、家庭生活の帳簿はまさに預金通帳です。じっくりチェックすれば、相続税申告もれ財産の防止が可能です。
このように把握した証券会社と通帳の入金を比較するだけでも申告もれの防止につながります。
被相続人の通帳を確認したところ、少額なのですが、毎月一定の入金があったとします。金額が少ないので、気にしなかったところ、実は某所(あるいは某国)に預けていた資産の利回りであったことが判明し、評価したところ1億円にもなりました。
少額な入金でも定期的に入る性格のものは、利回り等を疑って、それに対する元本があることを想定し、被仕向け先(振込元)を調べてみてください。そこを意識するかしないかだけでも大きなリスク回避ができると思います。
弱りました。何に使ったお金か見当がつきません。税務調査に来られて「この出金は?」ということになれば、答えに窮することになります。
何気に「不動産登記事項証明書」を確認したところ、出金時期を同じくして、抵当権が抹消されています。つまり、借入金の返済だったのですね。申告もれではないですが、このようなチェックも大切です。
出金には税金などもあります。市区町村のHP「納期カレンダー」を見て、固定資産税・市県民税・自動車税の納期限をチェックすれば、同日の出金はそれらの支払いに充てたとことが説明つきます。何の引き落としかわからない場合に備えて……。
税務署が調査で指摘する財産に「名義預金」があります。「名義預金」とは、被相続人の名義ではない家族などの名義で被相続人がお金を出して作られた預金で、贈与されていない預金の通称です。
生前贈与され、贈与税の申告が出ていればまだしも、それらがないままで家族名義のまま残っている預金については、相続財産と認定される恐れがあります。
では、どういう預金に狙いをつけるのでしょうか。次の例で見てみましょう。
答え:もうおわかりでしょうが、税務署が目をつけるのが、例2と例3です。
例2の預金は、妻に収入がないのに多額の預金があるため、「被相続人である夫が作った預金に違いない」と疑われます。
例3の預金は、長女の年収からすれば、十分長女自身が作れるものでしょう。問題なのは「何故、北海道なのに、被相続人の自宅近く?しかも旧姓名義のまま」ということです。
すなわち、税務署が目をつける名義預金とは、その名義人自身が通常では作ら(れ)ないだろうと想定される預金です。
ちゃんとした理由があれば、あわてることはありませんが、こういう預金はこういう目で見られるということを想定しておくと、調査であわてることはないと思います。
税務総合戦略室便り 第77号(2016年04月01日発行分)に掲載
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