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元国税調査官が語る国際税務解説 第五回 
組合課税について

category: 節税国際税務
第34号(2012年01月01日発行分)

その他

今月は、国際的な節税スキームに利用される各種組合について解説したいと思います。一般的には、任意組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合、匿名組合、海外ではパートナーシップ等が有名ですが、これら事業体の特徴を充分に理解した上でスキーム作成に活用する必要があります。

(1) これらの組合を利用することのメリット

①パススルー

まず一つ目の特徴は、これらの組合は、パススルーの事業体であるという点です。パススルーとは、組合業務にかかる損益が組合ではなく組合員に直接帰属することをいいます。組合自体は納税主体とならないため、法人税等の申告をする必要もありません。したがって、これらの組合は、株式会社のように事業体の段階での課税関係が生じませんので、組合員の手取金額は大きくなります。

②損失の取込み

組合員は、組合事業に係る利益が発生した場合は、出資持分に対応する利益の額を組合員の利益として申告するのですが、組合事業に損失が生じた場合も自らの損失として申告することになります。つまり、組合事業が損失の場合、組合員は、他の所得との相殺が原則可能となります。

③投資家の秘匿性

また、税務上の問題とは直接関係はありませんが、ファンド経由の投資は投資家が秘匿されるという特徴があります。特に海外投資家は、外国籍のパートナーシップ等を利用して日本の企業に投資していることがよくありますが、企業の株主名簿にはパートナーシップ名が記載されますので、真の投資家であるパートナーシップのメンバーを確認することはできません。
したがって、税務当局が、外国籍のパートナーシップのメンバーを確認する場合には、調査法人への協力要請や租税条約の情報交換規定等を利用することになるのですが、いずれにしても、非常に投資家解明は困難な作業となります。

(2) リスク

①任意組合に対する共同事業性の 否認のリスク

任意組合を通じて投資する場合、同組合は、共同事業性が前提になっているため、組合員が組合事業に積極的に参加せず、他の組合員が重要事項の大部分を決定していると認定されると、共同事業性が認められず、組合員の損失の取り込みが否認されるリスクが生ずる可能性があります。

②税務調整の失念

パススルーの事業体の場合、損益が組合員に直接帰属するため、任意引当金や交際費等の税務調整も組合員の段階で行わなければなりません。
これらの税務調整の失念が、税務調査で発覚することが多いため、注意する必要があります。

(3)匿名組合の特徴

匿名組合は、当事者の一方が相手方の営業の為に出資をなし、その営業により生じる利益を配分すべきことを約する契約です。
 つまり、匿名組合員が営業者に出資をし、その経営の一切を営業者に委ね、組合員はその利益分配を受け取る契約です。匿名組合は、営業者の単独事業となるので、上記で説明した共同事業を特質とする任意組合等とは、少し性格が異なります。また、匿名組合自体は、法人税等の申告義務はありませんが、営業者と組合員は申告義務があります。
 匿名組合が、租税回避スキームによく利用される理由は、営業者側で組合員に対する分配金について損金算入することができるという点です。したがって、たとえ組合事業で大きな利益が発生したとしても、すべて配当として組合員に分配した場合、営業者では課税所得が原則、生じないことになります。

(4)匿名組合と租税条約を利用した  事例(図1参考)

医療機器の販売を営む米国法人が、日本で機器を販売するにあたり、日本で課税関係が生じないように仕組んだ一連のスキームです。米国法人が、子会社を日本に、ペーパーカンパニーをオランダに設立した上で、オランダ法人(組合員)と日本法人(営業者)との間で匿名組合を締結させます。営業者である日本法人は、利益をすべてオランダ法人に分配しますが、分配金は損金算入されますので、日本法人の課税所得は発生しません。
 日本法人からオランダ法人への匿名組合分配金は、国内法では20%の源泉税が賦課されますが、日蘭租税条約ではその他所得に該当し、日本の課税権はなくなりますのでオランダ法人の日本での課税関係も生じません。  したがって、当該一連の取引は、すべて日本で行われているにもかかわらず、日本で全く課税関係が生じないことになります。
 税務当局は、当該取引は、親会社を一にするオランダ法人と日本法人の関連者同士による共同事業であり、日本法人がオランダ法人のPEに該当するものとして、オランダ法人への決定処分を行いました(PEとは、日本における拠点のことをいい、外国法人は日本にPEを有している場合は、日本で申告する必要があります)。判決では、裁判所は、租税回避行為があったことは認めたものの、匿名組合契約を組成するという方法を採用することが許されないとする法的根拠はないとし、租税回避そのような目的自体、自由主義経済体制の下、企業又は個人の合理的な要求・欲求として是認される場合もあると結論づけました。
 しかし、このような形態でのオランダを利用したスキームが続いたため、租税条約の改定作業が行われ、現在では、日本法人からの匿名組合分配金には20%の源泉税が課税されるようになりました。
 また、第三国の法人(このケースは米国法人)が、租税条約のメリットを享受するためにペーパーカンパニーを設立することは、トリーティショッピング(条約漁り)といわれ、条約の利用が制限される場合があります。
 このように、組合を利用することにより、大きな節税効果をもたらすことができる場合もありますが、専門性を伴うため、このようなスキームをお考えの方は専門家への相談をお勧めします。

税務総合戦略室便り 第34号(2012年01月01日発行分)に掲載

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