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税務総合戦略室 室長通信 第四回 
国税OB税理士の生きる道

category: 税理士税務署
第37号(2012年04月01日発行分)

執筆者1

4月中旬、国税局在籍当時のOB会に出席してきました。年に一度定期的に開催され、いろいろな情報交換をしています。ほとんどの方が定年まで勤められた方で、国税局の課長職や大規模な税務署の署長で退官された方が多いので、私はいつまでたっても末席でペーペーのままですが、在職当時は見上げる立場だった大先輩も、同じ税理士同士として対等に接していただけるので恐縮しながらも感謝して懇親を深めています。
 OB会でお話しをお聞きしますと、皆さん在職当時とは勝手が違い、いろいろとご苦労されているようです。長引く不況で会計事務所も新規顧客の減少、顧問料の引き下げなど、抱える問題は多いのですが、それ以外にも国税OBならではの悩みがあります。

帳簿の作成は不得手です

税理士の主要な業務として、会計帳簿の作成、税務申告書の作成があります。ところが国税OB税理士はこの業務が得意ではありません。なぜなら在職当時行っていた仕事は帳簿を作り上げるのではなく、出来上がった帳簿・決算を「壊す」作業だったからです。帳簿に表現されている取引を否認する、または帳簿に表れていない取引を発見して課税するのが仕事ですから、企業の経済取引を証拠書類から帳簿に記録する業務とは無縁の世界にいたわけです。
 さらに最近は税務調査が完結するのに、当局により課税額を通知する処分(更正通知)が行われることよりも、納税者が自ら修正申告書を作成し提出することにより終了することのほうがはるかに多くなっていますので、国税局の一部の部署を除いては調査官が申告書の作成業務に関わる機会もめっきり減りました。
 また、税務署を定年まで勤め上げたOBの方は、晩年には管理職として部下のマネジメント業務を行うことがほとんどで、実務に携わることは稀です。もともと不得手で慣れないコンピュータを使って、最新の会計ソフトを駆使し、帳簿や申告書を作成するなどは、お手上げ状態というのが実情のようです。

初めての民間企業です

民間企業の方には笑われてしまう話ですが、恥ずかしながら元公務員はお金の話をするのが苦手です。親方日の丸ですから給料はだまっていても毎月振り込まれますし、昇進・昇給に差はありますが、仕事の結果(例えば調査による追徴税額)が給与にダイレクトに反映されるなどということはありません。学校を卒業してから人生で一度も「営業」というものをしないで生きてきたのです。
 国税局・税務署でも調査だけではなく相談業務を行いますが、当然対価はいただきません。すべて行政サービスの範囲内です。自分のやった仕事にどれほどの価値があるのか、どれほどの報酬がいただけるのか。その感覚がないため胸を張って料金を請求できないのだと思います。
 私も退官して税理士として仕事をするようになった当初は、自分の仕事に対する対価がわからず、自信を持ってお客様に報酬を請求させていただくことができませんでした。
 そんな中、入社して2ヵ月後くらいに、ある顧問先企業様に税務署の調査が入りました。私にとって税理士としての初めての調査立会い業務でした。調査が進み、当初の指摘金額は数千万円、いわゆる見解の相違・グレーゾーンの部分に関する指摘が多く含まれていました。少しでもお客様の税負担を少なくしたいと、調査官の事実認定に反論し、時には激論を交わし、何回か税務署にも折衝のため足を運び……と仕事をし、結果、数百万円の追徴に減額することができました。
 調査が終了し、社長様より『自分の代わりになって税務署の調査官とやりあっている姿を見て感激しました。本当にありがとうございました』とのお言葉をいただき、とてもうれしく感じたのを覚えています。今までの人生で、自分のやった仕事に感謝されて報酬をいただいたのは初めての経験でした(税務当局の頃は仕事をすればするほど恨まれてしまう立場でしたので)。
 それ以後、いろいろな出来事がありましたが、今は誠心誠意良い仕事をして、お客様に喜んでいただき、胸を張って報酬を請求させていただけるよう努力していくことに大きなやりがいを感じています。
 昨年、税務総合戦略室を発足し、数名の国税局OBを採用しました。税務当局をやめたばかりのメンバーに話を聞くと、入社当時の私と同様、やはりお金の話をすることが苦手だそうです。でも、少しずつ自分の仕事を評価していただき、その対価として報酬をいただけることの喜びを実感してきているように思います。

自分の専門外の税務はわからない

税務署の組織は、個人の所得税に関する業務を取扱う「個人課税部門」、企業の法人税に関する業務を取扱う「法人課税部門」、相続税や贈与税、資産の譲渡に関する業務を取扱う「資産課税部門」などに分かれています。その区分のことを国税組織では【事務系統】と呼んでいます。
 ほとんどの職員は採用され事務系統が決まると、基本的に退職まで同じ系統の仕事を続けます。『税務署に何十年も勤めていたのだから税金のことは何でも知っているだろう』と思われるでしょうが、実はそのようなことはなく、例えば法人税の系統にいた職員に相続税の質問をしても深い部分はよくわからないというのが実情です。
 一般の税理士さんは税理士試験合格のため複数の税目を学びますので、幅広くいろいろな種類の税金の知識を持っているのとは大きな違いです。

国税OBの生きる道

いろいろと国税OBの不得手な点を書きましたが、先輩諸氏からお叱りを受けそうなので、国税OBならではの強みもお伝えしたいと思います。
 国税OB税理士は、何十年もひとつの税目に特化した仕事を続けてきましたので、その分野においては深い専門的知識を有することになります。さらに国税局の部署には、【情報収集】【法令審理】【消費税】【国際調査】【資産評価】【訴訟業務】【内偵調査】など細分化された専門部署が数多く存在しますので、所属していた部署により、その分野のスペシャリストになる者もいます。「広く浅く」でなく「狭く深く」が国税OBの特徴かもしれません。
 そのような経験を活かし、退官後税理士として仕事を始めた場合に元国税調査官がお客様のお役に立てることを私なりに考えて見ますと、

  • 長年課税当局側で実際に裁量課税を行ってきたので、グレーゾーンに関する裁量の加減(当局がどこまで課税してくるか)を経験知として体で持っている。
  • 数多くの税務調査を経験してきて、様々な経済活動の(課税側の)事実認定を行ってきたので、税務当局の事実認定に対し異なる角度での反証を行える。
  • 組織的な命令系統や税務職員の思考回路・調査手法を知り尽くしているので、最適な調査終結に向けた【勘所】がわかる。
  • 「海外税務」「資産評価」「法令解釈」など在籍していた部署によりそれぞれの専門的知識と得意分野を持っており、一般的なものの本に書いてあるようなことより深度ある節税提案を行える。

といったような点が長所として挙げられるのではないかと思っています。

メンバー全員の経験と強みを活かしたサービスを提供いたします

私共『税務総合戦略室』には国税局・税務署の様々な異なる部署の経験者が所属しており、個々の税務問題に対しては、メンバー全員でディスカッションし、最適な結論を導き出すような体制を採っています。それぞれ知っていること、知らないこと、得意なこと、得意でないことがありますが、各人がそれぞれ歩んできた個々の専門分野の経験と強みを最大限に活かしていくことで、お客様に今までにない安心と満足を感じていただけるようなサービスをご提供できるよう努力していきたいと考えています。
 せっかく税理士として第二の人生をスタートしたのですから、今まで生きてきた人生で得た知識を最大限活用してお客様に喜んでいただけるよう仕事をしていくことが【国税OBの生きる道】であり、楽しい生き方ではないかと思っています。

税務総合戦略室便り 第37号(2012年04月01日発行分)に掲載

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