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税務総合戦略室 室長通信 第六回 
誰が調査に来ても結果は同じ?

第39号(2012年07月01日発行分)

執筆者1

今年もすでに半年が過ぎ、7月となりました。7月は税務職員にとっては特別な月です。国税当局では毎年7月10日に異動発令が行われ、3分の1に近い職員が新たな勤務地へ転勤することとなります。毎年7月初旬は『今年は異動するのかな……』と、そわそわ落ち着かない気分で過ごしていたことを思い出します。
 毎年、それだけの数の税務職員がぐるぐると異動するわけですから、どんな調査官が会社に調査に来るのかは「運次第」ということになります。調査を受ける側は残念ながら相手を選ぶことはできません。
 今回は「調査官によって調査の結果は異なるのか?」ということについてお話したいと思います。

法律に基づく調査なのに……

当然ですが、税務調査は法律に基づいて行われます。例えば法人税の調査であれば、法人税法、租税特別措置法などを拠り所とした調査が行われます。更に職員によって法律の解釈・取扱いが異なっては困りますので「通達」というものが制定されています。
 「通達」とは行政上の取扱いの統一性を確保するために、上級官庁(税務当局の場合は国税庁)が下級官庁(国税局及び税務署)の職員に向けて定めたものです。あくまでも組織の内部における指針であり、納税者を直接に制限するものではありませんが、実際にはこの通達によって事務が執行されていることから、税務行政は「通達行政」であるとも言われているところです。
 さて、このように税法、通達によって税務調査が行われるのですから、本来は全国どこの税務署のどんな調査官が調査に来ても結果は同じはずです。でも、おそらく皆さんそんな風には思っていないのではないでしょうか。スピード違反の取り締まりが警察官のやり方によって結果が違うようでは安心して道路を運転することが出来ないように、税務調査においても調査官によって結果が異なるようでは安心して経営を行うことはできません。それでもなぜ、法律に基づく調査なのに結果が異なるという認識を多くの方が持たれているのでしょうか?

能力の差は調査結果に影響するのか

一般企業でもそうだと思いますが役所でも職員の能力は一律ではありません。教育、指導を行っても人間ですからどうしても能力に差は出てしまいます。仕事に対する適正も様々です。
 国税当局に在籍していた頃は、多くの方と一緒に調査をしてきましたが、思い返してみてもいろんな人がいました。本当に尊敬に値する優秀な先輩方にも多く出会いましたし、逆に残念ながら公務員的体質であまりやる気のない職員もみてきました。
 調査に対する経験・適性・やる気でどうしても差は出てきますが、売上の繰り延べや在庫確認のような期間損益、交際費、減価償却費のような調査においては会社の帳簿と証拠書類の照合にすぎませんから、誰がやってもそんなに大きな差はでないかもしれません。
 税務調査の本来の目的は、適正な申告をしていない=不正を調査することですから、ちゃんとした調査官は【重箱の隅をつつく】調査ではなく、できあがった帳簿だけを見るのではなく、モノ・カネの動きに合わせて取引の様々な原始記録を確認し、必要であれば現場に足を運んで直接担当者からヒアリングを行うような手法を取ります。そのような調査官は帳簿だけを見ていても不正の発見には至らないことがわかっていますので、突然、机の中や金庫、パソコンのデータを見せてくれなどと言い出して軋轢を生むこともあります。
 しかし、そのような調査も不愉快な思いはしますが、会社が何の不正も行っていなければ、結局、税金の追徴には至りませんのでそんなに心配することはありません。一番困るのは法律上、何の問題もないと思っていたのに思いもしなかった指摘を受けることではないでしょうか。いわゆる見解の相違です。

もめるところは法律ではない

「調査官によって調査の結果は異なるのか?」という問いに対して、私の答えは、「異なる場合もあります」です。
 何故かというと、実は税務調査の現場でもめるのは税法の解釈ではなく、「事実の判断」によるところが多いからです。
 例えば、

  • 支払った役員退職金は「不相当に高額」なのか
  • この経費は「個人的経費」なのか
  • 関連会社との取引金額が役務の提供の対価として「適正な報酬額」なのか

といったような問題は法律に正解が書いてあるものではありません。
 すなわち税務調査に来た調査官なりの「感覚」によって、高すぎるとか、安すぎるとか、個人的だとかの判断がなされるのです。
 不相当に高額な部分の役員退職金は損金にできないことになっていますが、過大な役員退職給与については「その役員の業務に従事した期間、退職の事情、同種の事業を営む法人で事業規模が類似するものの支給の状況に照らし、退職給与として相当と認められる額を超える金額」とされています。30年も40年も会社のために人生を捧げてきてリタイアする時の退職金の額も自由に決められないということになっているのです。そして、同規模同業種の法人と比較しろと言われても、他社がどれほどの退職金を支払っているのかを知る由もありません。しかたなく巷で一般的な計算方法と言われている、
《最終月額報酬×勤続年数×功績倍率=役員退職金》
という方法で(納得はいかないけれども)退職金を計算している例が多いのではないでしょうか? この計算方法が法律に定められているわけでも何でもないのですが、こうやって算出しておけば否認を受けないと勘違いしている方も多いように思います。ところが税務調査が入って、『功績倍率が高すぎる』とか『最終月額報酬を直前に引き上げているので認められない』などという指摘を受けてびっくりしてしまうのです。
 また、当然に会社のために使ったと認識している経費について、『この海外旅行は個人的色合いが強い』だの『この外車は個人としての趣味』だの『この会議費は個人的な飲食』だのといった指摘を受けたりすることもあります。海外視察旅行の内容が業務に関連しているか個人的か、個人的部分がどれくらいかなどということは実際に同行でもしていなければ本当にはわかるわけもないのですが、調査官の迫力に押されて納得のいかないながらも修正申告に一部従ったなどという例もよく聞きます。このあたりはまさに調査官の個人的感覚による部分で、確たる根拠もなしにつまらない指摘をしないというスタンスの調査官もいれば、とりあえず個人的だと指摘してみて乗ってくれば修正申告の対象にしようという調査官もいます。
 さらに最近調査の立会いをしていて非常に多いのは関連会社間の取引に対する指摘です。近年は新規事業の展開、事業部門の分社化、事業承継の円滑化、海外展開等により企業グループによる経営が盛んになっています。税務当局では同一資本関係、役員同士が親族関係の企業においては、他社との取引に比べ金額が恣意的に決められ、利益調整に使われやすいという見方をしがちです。そのため関連会社間の取引金額について「高すぎる」「低すぎる」という指摘が多くなされます。ですが、『では適正な金額とは、いくらですか?』という質問に答えられる調査官はなかなかいません。金額の高い低いは評価の問題ですし、明らかな利益調整でない以上、企業がそれなりの理由・算定根拠によって決めた取引金額は尊重すべきものではないでしょうか。ひどい場合には両社とも黒字で法人税を納税しているのに、片方の経費のみ高額を理由に寄付金認定し、相手方企業の収入はそのままにするなどという、理解に苦しむ課税処理を行おうとしたケースもありました。

調査官によって結果を左右されないために

調査官によって結果が「異なる場合もあります」とお話しましたが、本来は同じ結果であるべきです。調査官も人間ですから法律に決められていない部分の判断に個人的な差があるのは仕方のないことかもしれません。会社側、立会い税理士は納得のいかない事実認定に対しては正々堂々と正論で反論できるための準備をしておくことが、結果としていつどんな調査に向けても企業を守るための手段になるのではと思います。

税務総合戦略室便り 第39号(2012年07月01日発行分)に掲載

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