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移転価格の執行は変わりつつあるのか

第40号(2012年08月01日発行分)

執筆者3

税務当局は、『移転価格上の税務コンプライアンスの維持・向上に向けた取組』を始めました。今年の4月4日に開催された「国税庁との移転価格に関する意見交換会」では、国税庁調査査察部調査課長 伏見俊行氏による「移転価格上の税務コンプライアンスの維持・向上に向けた取組」と題した講演がなされています。

■その目的は、移転価格に関する問題の発生を防止する。そのために、

  • 企業の自発的かつ適正な移転価格に関する対応の促進を図る。
  • コミュニケーションを円滑にし、企業と税務当局が協力して移転価格問題の発生を防止する。

■そのための方法として、

  • ①説明会等と、②企業への個別接触を通じた働きかけを行う。
    税務当局は、今年の4月から、

①説明会を、全国の各地で〝大企業〟を対象として行なう

説明会では、移転価格を巡る国内外の動向を紹介しつつ、企業自ら移転価格上の税務コンプライアンスの維持・向上を図っていくことの重要性について説明し、対応を働きかけていきます。

②企業への個別接触を通じた働きかけを行なう

具体的には、企業の「移転価格に関する取組状況を確認する」ために、新たに作成したチェックシート「移転価格に関する取組状況確認のためのチェックシート」を使って、企業自らが、移転価格について独立企業間価格を算定して適正な申告をおこなうよう求めることとしています。
 税務当局は、このチェックシートを企業の(1)自己チェックと、(2)税務当局による企業サイドとのコミュニケーションの手段として活用する方針だと聞いています。
 そして、企業自らが自主的に移転価格上の税務コンプライアンスの維持・向上に取り組むことを、直接、個々の企業に働きかけていくとしています。
 当面は、一部の〝大企業〟を対象に実施する予定です。4月から6月までは東京、大阪、名古屋及び関東信越国税局において、国税局調査部の特別国税調査官所掌の企業のうち、国外関連取引を行う企業の一部を対象にして個別の接触を行ないます。7月以降は全国的に拡大予定です。

移転価格税制は、国外関連取引での価格が第三者間における取引価格(独立企業間価格という)とは異なり、国外関連者との取引を通じた所得の海外移転が認められる場合、その価格が「独立企業間価格」で行なわれたものとみなして、所得移転額を算出し加算する税制です。
 この税制を適用した移転価格調査による更正所得金額は10億円単位になることもしばしばあります。追徴課税されると二重課税が発生するだけではなく、二重課税状態の解消のための相互協議、あるいは税務訴訟に発展するなど、企業サイドの負担は大きいのが事実です。
 実は、税務当局がアグレッシブな移転価格調査を行った結果、多額の所得移転額の更正を受けた後の、OECD非加盟国との相互協議が合意に至らず、二重課税状態を解消できないことがあり、問題になっています。このことから、税務当局はここ数年、移転価格調査を自制しているかのように思われます。
 税務当局には、調査とは別に「事前確認」があります。事前確認とは、納税者が事前に申出た移転価格の算定方法に税務当局が【確認】を与えると、移転価格調査は行われないという制度です。こちらの方は、移転価格調査を受けた大企業を中心に申出件数が増加し、毎年100件を超えています。調査は受けたくないものです。

このように、移転価格の問題の芽を事前に摘み取ってしまおうという、行政指導にどこか似かよった手法を取り入れたわけです。税務当局の執行は変わりつつあるとの感がします。
 最近では、移転価格調査が減ったという税理士先生もいらっしゃいます。しかしながら、国税庁の発表した調査事績を見ると移転価格調査件数は減少してはいません。1件あたりの更正金額は減少していることから、〝中小企業〟に調査対象は移っているのではないかと思われます。ここで取り上げたチェックシートによる事前の「自己チェック」が本当に必要なのは、〝中小企業〟だと思います。国外関連取引を行なう中小企業の皆様にも、移転価格対策として活用することをお勧めします。

税務総合戦略室便り 第40号(2012年08月01日発行分)に掲載

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