税務総合戦略室便り

HOME >  税務総合戦略室便り >  第44号 >  元国税調査官が語る国際税務解説 第十五回 富裕層はなぜ日本から脱出するのか?

元国税調査官が語る国際税務解説 第十五回 
富裕層はなぜ日本から脱出するのか?

category: 国際税務
第44号(2013年01月01日発行分)

その他

1 日本脱出の目的

最近、雑誌等で「日本脱出」「海外移住」という言葉をよく見かけることがあります。確かに弊社に相談にいらっしゃるお客様の中にも、海外への移住を本気で考えている方が増えているように感じます。  震災や原発、円に対するリスク等の外的な要因も当然あるとは思いますが、日本の政治状況や経済状況に先が見出せないことも大きな要因になっているのでしょう。  一般的に、日本を脱出し、海外への移住を考えている方々は「富裕層」と呼ばれている方が多く、税金を最少化することを最大の目的としている方が多いことも事実です。

2 富裕層と税金

一つの例として、会社のオーナーの生涯の日本における税負担を考えてみましょう。自らがオーナーとなっている会社として法人税(税率38%)を納め、さらにオーナー自身として、会社から支払われる報酬や配当に対して所得税(最高税率50%)を納め、最終的には、長年蓄財してきた財産にまで贈与税や相続税(最高税率50%)が課税されることになります。  このケースを考えただけでも、富裕層の方が生涯にわたって、日本にどれだけの税金を納めることになるのかがおわかりいただけるでしょう。当然、これら以外に納める税金として消費税等の諸々の間接税もあるわけです。しかも、これに追い討ちをかけるように、富裕層を狙った増税政策が現在すすめられています。所得税・相続税の増税、国外財産の調書制度等……。取れるところからとるという安易な考えなのでしょう。  たとえ、納税額が多くなった場合であっても、納めた税金が日本のために有効に使われているのであれば富裕層の方も納得できるのでしょうが、最近のニュースでは、「公務員の天下り」「生活保護費の不正受給」等の税金のムダ使いの話題が多く、富裕層でない私のような者でさえも税金を払うことがばかばかしいと感じることがよくあります。  また、富裕層の方が日本の高税率についての不満をもらすと、低所得者層から非難を受けるという風土が日本にはあります。富裕層の方が稼得した所得とは、自らが知恵を絞り、努力したことに対する成果であり、富裕層が納税した多額の税金が低所得者層の生活保護費や失業手当に使われ、社会に多大に貢献しているわけです。したがって、富裕層の方々が富裕層狙い撃ちの税体系に対して異議を唱えることは当然の権利であり、決して非難されるようなことではないと考えます。

3 合法的な節税対策

しかし、税金を納めることに納得できない場合であっても脱税するわけにはいきませんので、合法的に税コストを削減するための方法を考えなければいけません。そのような場合、一番手っ取り早い方法が日本を脱出するということになるのではないでしょうか。これは、非居住者になって、日本の課税関係から外れるということを意味しています。  富裕層の方々が日本の税負担を回避するために日本を脱出することについて、好印象を持っていない方もいるかもしれませんが、日本の先の見えない現状を考えると、海外に目を向けることは一つの選択肢として有効な手段です。  海外には、日本より税率が低い国や、キャピタルゲインに課税しない国、贈与税相続税が存在しない国等が多々ありますので、戦略的なスキームを構築することにより、信じられないくらいの税コストの削減が可能となります。したがって、これを考えれば、富裕層が海外に脱出することは充分合理性がある行動です。  国によっては「出国税」という税金が導入されており、海外への脱出の際に税金を賦課するケースもあります。日本ではまだ導入されていませんが、今後、日本からの脱出者が増加すれば、出国税が導入される可能性もあるでしょう。  日本に多大な貢献をしている富裕層の理解を得るためにも、政治家には税金を取ることばかり考えずに、ムダな歳出を削減させることを最優先に考えてもらいたいものです。

税務総合戦略室便り 第44号(2013年01月01日発行分)に掲載

お電話でのご相談・お申込み・お問い合わせ

全国対応いたします。お気軽にお問い合わせください。

03-5354-5222

PAGE TOP