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税務見聞録~多税に無税~第2回 
疑わしきは……

第47号(2013年06月01日発行分)

執筆者4

疑わしきは罰せず。聞いたことのある言葉ですよね。刑事裁判の基本原則ではないでしょうか。
 しかし、司法の世界でも、「疑わしきは罰する」という傾向の事件もあります。痴漢やセクハラに関する裁判では、疑わしいというだけで有罪を言い渡され、「それでも僕はやってない」と叫びたくなるようなケースも多くあるのではないでしょうか。そんな映画もありました。映画の世界だけならいいですが、実際に自分の身に降りかかった場合、冤罪によって人生そのものが一変してしまうこととなってしまいます。人を裁くということは重いことです。
 税務調査には強制調査と任意調査があるのはご存知のことかと思います。強制調査は告発されれば地検から起訴され、裁判では有罪率100%です。つまり、「疑わしきは……」ではなく、「疑わしい」と断定できるため有罪率100%となるのです。しかし、この有罪率100%神話が、ある個人の申告漏れ事件の判決で崩れました。
 この事件の脱税額は1億3千万円と多額です。争点は端的に言いますと、申告しなかったのは故意か過失かということです。結果、無罪となりました。「疑わしきは罰せず」の精神による判決ではなかったのではなかろうかと思います。
 起訴した側は捜査および取調べなどを時間をかけて行ったのですが、決定的な証拠などを掴むことができず、さらに、本人も終始一貫して脱税の意思はないと主張し続けたようです。そうした中で起訴に踏み切ったのは、「起訴ありき」「故意に申告しなかった」と最初から結論付けていたため、振り上げた拳を下ろせなかったのでしょう。
 この事件は、その後、地検が無罪判決は不服として控訴しています。結局、引き下がる勇気がないということなのでしょうか。どのような審判が下るのか気になるところです。 では、もうひとつの税務調査の方はどうでしょう。「課税ありき」「疑わしきは罰する」という風潮はあるのではないでしょうか。「この申告内容は正しくない」と思っているから、問題点を探し出すこともできるわけです。要するに、「ここに問題点がある」と思ってかかるのが調査に向かうスタンスなのです。
 間違い探しの次は重加算税ということになります。重加算税については、国税通則法で規定されています。
「(―略―)税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、(―略―)基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し(―略―)重加算税を課する」。
 任意調査における行政罰です。「隠ぺいし、仮装し」に該当する不正事実の主なものとして、①二重帳簿の作成、②帳簿書類の破棄隠匿、③調査簿書類の改ざん等や意図的な集計違算、④帳簿書類を作成記録せず売り上げその他収入を脱ろう(売上から除外すること)または棚卸資産の除外をしていることが挙げられます。③の「―意図的に―」や④の「―記録せず―」の場合、即、重加算税となるか。この場合、意思つまり故意か過失かということが問題になろうかと思いますが、何を持って故意過失と判断できるかですね。頭の中や心を読み取ることはできませんから。気絶するほどまで行かないですが、悩ましい事項です。 「This is 仮装隠ぺい」であれば問題ないですが、どうしてもそれが薄い、弱い、でも、状況証拠から不正が推測されるなんてことがあります。証拠が足りない、でも重加にしたいという葛藤の中、外堀を埋めるために反面調査等による事実の把握や、確認書、質問顛末書を作成を行い、客観的証拠や事実を積み上げていきます。そうした感情を抱いたまま作成に臨むため、質問顛末書などは文面が課税当局よりの内容となったり、さらには誘導尋問的な文書となっていきます。威圧・誘導的な手法により当局の認識に沿う確認書を提出させたという事例も報道されたこともあります。やはり、一億の過少より一千万の重加ということなのでしょう。
 調査では、「そう言われればそうかもしれない」「そうとられても仕方ない」などといわないことです。やってないものはやってないという毅然たる姿勢が大事なのです。
 調査の立会いをしていると、調査官は増差や重加に追われ過ぎているように思います。増差・重加の呪縛から解放されないと事実は見えないかもしれませんね。
 事実は何か。そして、引き下がる勇気も必要なのだと感じます。

税務総合戦略室便り 第47号(2013年06月01日発行分)に掲載

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