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元国税調査官のひとりごと 第5回 
調査における体験談

第61号(2014年12月01日発行分)

伊藤 徹也

今回は、私が国税時代に本当にあった、「ちょっとブラックな」話をいくつかご紹介します。

1. それ、当たったら……

夏の暑い時期でした、無予告で調査に伺って、社長さんに調査協力を求めている最中、ふと奥にいる女性従業員と目が合った、次の瞬間、金属製のバインダー3冊が宙に舞いました。
 目で追うと窓から外に向かって飛んでいきます。女性従業員が投げ捨てたようです。
 ……確かここはビルの5階。
 当たったら確実に大怪我だろうなあと思いつつ窓から外をのぞいたら、結構な人通り。何人かに見上げられ、思わず身を引いてしまいました。
 社長が困っていたから、従業員が心配してとっさにとった行動なのですが、これって、ある意味社長と従業員の意思疎通が取れている証拠と言える……でしょうか。
 結局、いわゆるB勘定(裏金)の帳簿でしたが、つくづく、通行人にあたらなくてよかったと思います。

2. 社長、言いましたよ

非鉄金属の買い取り業者のエピソードです。仕切書発行を担当する従業員の机のシートの下に、仮名取引の名前が記入されたメモが見えました。
「社長さんそこのメモ、コピーさせてください」
「いいよ、俺がとってあげるよ」
「ありがとうございました。……ところで、ここに書かれている内容を説明していただけますか」
「どれどれ……これ、どこにから持って来た! 勝手にコピーなんかして」
「今、社長さんが取ってくれたものですよ、俺がとってあげるとおっしゃって」
「いや、知らん。そんなこと言ってない」
 すると周りにいた従業員3名が一斉に立ち上がり、声をそろえて
「社長、言いましたよ」
 と言いました。

 どうやら、周りの従業員は、そのメモが意味することに気付いていて、何事もないように振る舞う社長を、「やけにあっさり渡していたけど大丈夫なのかなあ」と心配していたようです。
 だから、たまたま3人とも声が揃ってしまったようで、つい私も吹き出してしまいました。
 それにしても、全員で社長に突っ込むなんて、明るい社風の会社でしたね。

3. ファーストのファインプレー

明らかに現金勘定がおかしい会社でした、現金売上が漏れているようです。
 説明に窮した社長が経理担当を呼びました。経理担当が立ち上がろうとしたその時、椅子の間に隠していたメモが床に落ちたのが見えてしまいました。

 さりげなく右足で踏んづけて隠していたので、ちょっとの間見てない振りしていたのですが、社長との会話の中、このタイミングかなと思ったため言及しました。
「○○さん、あそこの現金出納帳見せてください」
「…………」
 経理担当は、にこにこするだけでじっとしています。そこでもう一度、
「そこの現金出納帳を見せてくれます?」
 経理担当者からは距離にして約1.5m、意を決したかのように、左足をスルスルと開き、さながら一塁手が捕球するときのような姿勢で取ろうとしていました。
 何とか手が届いたのですが、それで安心したのかバランスを戻すために、右足を引いてしまいました。
 「しまった」という顔をしていましたが、それ以前にあの不自然な格好でばれていないと思っていたのでしょうか。
 メモには、アルファベットと数字が書かれていました。さすがに社長も観念してくれたのか、メモの意味することをすんなり説明してくれました。
 我々にとっては、まさに経理担当者のファインプレーでした。

税務総合戦略室便り 第61号(2014年12月01日発行分)に掲載

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