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税務総合戦略室 室長通信 第三十九回 
税金の専門家としてなすべきこと

category: 税理士節税
第72号(2015年11月01日発行分)

執筆者1

お客様が税理士に期待すること

世の中には資格が必要とされる職業が数多あります。特に資格取得が業務を行うための必須条件となっている「業務独占資格」は、取得は困難ですが国からその業務に従事するための専門的知識、経験、技能等に関する基準を満たしていることを保証され、その資格により社会的な信用を得ることができます。
 例を挙げれば、医師、弁護士、建築士、公認会計士そして我々税理士も国家資格により仕事をさせていただいています。
 税理士事務所で行う仕事のうち『お客様からの税務相談にお答えする業務』『税務申告書を作成する業務』『税務調査に社長の代理人として立ち会う業務』『不服申し立て手続きに関する業務』は税理士の資格がなければ行えない「独占業務」になります。
 税務申告書の基礎資料となる会計帳簿を作成するだけの仕事は、税理士資格がなくても行えるため「記帳代行」業務だけを行っている一般の会社もあります。
 お客様は税理士に何を求めているでしょうか。
 私は、税理士に「税金の専門家であることを期待して」様々な業務を依頼していただいていると思っています。
 また、税金に関するあらゆる心配ごとに関しても、できるだけわかりやすく明確にご説明することも求められます。
 さらに経営者が最もストレスや不安を感じる税務調査の際には、味方になって顧問先を守るために最大限の努力をしてくれるものだと信じています。

お客様の「担当」は誰ですか

税理士事務所はこれらお客様の期待・ご要望に応えられているでしょうか。
 税理士事務所に対するお客様の不満として良く聞くものに「税理士が会ってくれない」「担当者がコロコロ変わる」というものがあります。ここで言う担当者とはその税理士事務所で働く一般のスタッフのことです。
 体調が悪くて病院に行ったときに、医者が対応せず看護師などのスタッフだけが対応するということはあり得ません。血液検査やレントゲン、CTスキャンなど医療情報を集めるための事前作業は医療スタッフが行ったとしても、その情報を基にして問診をし、最終的に適正な診断を下すのは必ず担当医であるはずです。
 同様に、何かしらのトラブルに巻き込まれ、法律事務所に相談に行って弁護士が対応してくれないというケースもないでしょう。
 クライアントにとって本当に困ったとき、対応してもらいたいのは高度な専門知識を持った医師や弁護士であって、資格のないスタッフに答を出されたとしても、安心も満足も得られません。
 税務の分野でもお客様の「担当者」は「担当税理士」であるべきなのに、なぜ税理士業界では資格のない担当者がクライアントに対応するような状況になっているのでしょうか。
 税理士も、独立開業し、ひとりで仕事をしていた時代には、お客様の対応は自分自身が行ってきたはずです。それが、事務所が拡大し、顧客が増加していくのに伴い、所長税理士だけでは仕事をこなせなくなり、他者に業務を振り分けざるを得なくなります。
 医療の分野であれば、小さな診療所が大きな病院に成長していく過程で、当然勤務医を増やしていくことになります。患者が増えているのに無資格の職員に医療行為をさせれば大変な問題になってしまうからです。命にかかわる問題です。
 税務の分野であっても本来は同じように事務所の拡大に応じて勤務税理士を増やしていかなければお客様を裏切ることになってしまいます。命の次に大切なお客様の資産を守るための仕事をしているのですから。
 ひとりの所長税理士の下に大勢のスタッフが働き、数百件ものクライアントを抱えている税理士事務所があります。
 そのような状態で、本当にお客様の望む専門家としてのサービスが行えるのか疑問です。
 医師免許を持たない「にせ医者」が時折大きく報道されるように、税理士資格を持たない「にせ税理士」も存在し、資格がないのに税理士行為を行った者は二年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられることになります(税理士法第52条)。
 これだけ重い刑罰を用意して無資格者が税理士行為を行わないよう手当てしているにもかかわらず、一方ではすべて資格のないスタッフが業務を行い所長税理士が「めくら判」を押しているケースを放置している現状が税理士業界にはあります。
 被害をこうむるのは、その実態を知らずに報酬を支払い続けるお客様です。

価格競争の果てに

 税理士業界も価格競争、価格破壊にさらされています。ディスカウント合戦の果てに月額数千円の顧問料を謳う事務所も現れる中、品質よりも数の勝負で営業している事務所に多くを期待することは難しいかもしれません。あらゆるサービス業に言えることかもしれませんが、価格とサービスの内容はある程度比例してしまうように思います。激安価格で質の高い専門性のあるコンサルティングを行うことは困難です。
 スタッフに任せきりで会社のことを深く理解していない税理士が、お客様の個別の状況に応じた良い税務対策の提案ができるはずがありませんし、税務調査の際にも税務署側の事実認定に対し異を唱え、自信をもって反論することはできないでしょう。
 弊社にセカンドオピニオンで相談に来られたお客様から「税金を安くするための提案を何もしてくれない」「税務調査の時に全く味方になってくれなかった」という不満の声を聞く機会も多いのですが、普段からの付き合い方がそのような結果を招いてしまっているようにも思います。
 税理士に多くを期待せず、「帳簿付けと申告書の作成だけやってくれればいいや」という「あきらめの空気」の中に信頼関係は構築されず、ますます悪循環を招くことになってしまいます。

「主治医」と「専門医」の活用

 お客様が本当に満足できる税務サービスを受けるためにはどうしたらよいのでしょうか。
 私達がセカンドオピニオンでお付き合いさせていただいている税理士先生の中にはクライアントのことを深く理解し、長年のお付き合いの中、「かかりつけの医者」のように企業を見守り、お客様の信頼も厚い方が大勢いらっしゃいます。決して担当者(スタッフ)任せにはせず、定期的にお客様と面談して税務相談に応じていらっしゃいます。
 しかし、現在の複雑で広範囲な税務問題を一人の税理士で解決することは非常に困難です。医療の世界では各分野の専門医が、それぞれの深い専門知識を生かし、患者固有の病状に対応しているように、税務の世界でもお客様ごとに異なる税金の問題に応じた専門家が対応しないと、最高の結果は得られません。
 現在の顧問税理士はかかりつけの「主治医」として、私達は主治医が判断に迷う部分(多くは正解のないグレーゾーン部分です)や主治医が解決できない特別な問題(自社株対策・相続対策・国際税務・税務調査など)に対し「専門医」として、力を合わせてお客様をサポートしていく体制を築いています。
 『税務総合戦略室』は四年半前に4名の国税OB税理士でスタートいたしました。立ち上げ当初この「税務総合戦略室便り」で私は、国税のOBを集めた理由について二つ挙げさせていただきました。
 一つ目は「税務の世界も医療の世界と同様に専門性が必要であること」、二つ目は「税金のグレーゾーンの存在」です。
 私達の考え方、行っていることは一貫して変わっていません。お客様が、本当の意味で税金の不安・ストレスから解放されるために、様々な専門分野を経験してきた専門家集団が力を合わせてお客様をサポートしていきたいということです。
 4名で始まった戦略室メンバーは、異なる専門分野の税理士が少しずつ増えていき、現在13名になりました。これからも「税務署の目線」を知り尽くしたメンバーが「顧客目線」でお客様が税金のストレスから解放されるために努めてまいりたいと思っています。

税務総合戦略室便り 第72号(2015年11月01日発行分)に掲載

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