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国外財産調書制度について思うこと

category: 節税国際税務
第73号(2015年12月01日発行分)

その他

1 国外財産調書制度

本コラムでも何度か取り上げてきましたが、国外財産調書制度とは、国外に5千万円超の財産(預貯金、不動産、有価証券、貸付金等)を保有している個人は、税務署にその内訳を記載した調書を提出しなければならないという制度です。
 先日発表された国税庁のプレスリリースによりますと、今年度、税務署に提出された国外財産調書の提出件数は、日本全国で8184件だったということです。導入初年度の昨年の提出件数は5539件だったので、2500件ほど昨年より増加したことになります。
 個人的に、導入2年目となる今年の提出件数について、注目していたのですが、「意外に少ないな」というのが率直な感想です。8184人というのは、日本の人口に占める割合では0.006%であり、1万5500人に対して1人ということになります。リスク分散として海外に資産を保有することが珍しくなくなった現在において、皆さんはこの数字をどのように考えるでしょうか?
 なぜ、私が今年の発表に注目していたのかといいますと、導入初年度となる昨年は未提出者への罰則規定はなかったのですが、導入2年目である今年度からは、罰則規定(一年以内の懲役又は50万円以下の罰金)が適用されるため、提出者が一気に増加するものと考えていたためです。

2 国外財産の有効利用

海外に資産をシフトしていくことのメリットはいくつか挙げられますが、最も大きなポイントはリスク分散でしょう。「卵を一つのカゴに盛るな」という格言があるように、財産を「円」のみで保有する事は、日本の逼迫した財政状況を考えた場合、得策ではありません。
 また、海外のファンドや保険は様々な種類があり、日本では考えられないような運用成績を達成しているファンドや多額の解約返戻金や保険金が発生する保険商品もあるため、投資の選択肢も増えるものと思われます。
 一方、国外財産については、国外財産調書制度、国外送金調書制度、租税条約による情報交換、OECDによる国際的な脱税包囲網、金融機関のマネーロンダリング対策等の制度の拡充が進み、また、税務当局側も、海外関係の調査に重点項目においているため、一昔前のように、「海外に財産を移せば、国税当局の目も届かないため、隠しとおせるだろう」という時代は終焉をむかえています。
 したがって、今後、海外の様々な資産や商品を有効利用し、財産形成を考える場合には、当然の話になりますが、適切な納税を前提にした上で、それに対する節税対策をどのように効果的に行っていくのかという点がポイントになるのではないでしょうか。

3 確定申告と税務対策

海外資産から生じた収益も、確定申告を行う必要がありますが、皆さんの中には海外の商品は、関連書類が外国語で記載されている点や、そもそもどのような商品なのかを理解していないため、確定申告が面倒であると考えている方も多いと思います。
 したがって、例えば、海外のファンド等を購入する場合、毎年の確定申告が面倒な方は、無分配型のファンドを購入するという方法も考えられます。無分配型であれば、売却した際は売却益に対して課税され、確定申告が必要となりますが、保有期間中は、収入が発生しませんので、確定申告を行う必要がありません。
 また、将来的に海外に移住しようと考えている方は、今のうちに国外財産を保有する事でメリットが生ずるケースがあります。
 海外ファンドや海外不動産等のキャピタルゲインに対して、日本で課税される条件は、原則、売却時に日本の居住者であることが前提となっています。したがって、日本にいる間(居住者の間)に、将来的に値上がりしそうな国外のファンドや不動産等を購入しておき、将来、キャピタルゲイン課税のない国に移住した後、売却をすれば、日本でも移住先の国でも課税されないことになります。
 ただし、ファンド等の有価証券を、移住の際に、時価一億円以上保有しているケースでは、出国税により、課税を受けることもあるため注意する必要があります。

税務総合戦略室便り 第73号(2015年12月01日発行分)に掲載

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