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「金融所得課税」一体化について(その2)

category: 所得税
第75号(2016年02月01日発行分)
元国税調査官・税理士
大柳 和二

前号では、平成25年度税制改正により金融商品の多様化に対応するため公社債の譲渡益を課税対象とし、投資リスクの軽減を図る観点から、株式及び公社債等の譲渡所得等の分離課税とし、他の利子、配当等との損益通算の対象とする「金融所得課税の一体化」とする改正の概要について説明しました。
 今回は、現行の税制におけるデリバティブ取引における損益の取扱いについて説明するとともに、「金融所得課税の一体化」においてのデリバティブ取引を含めた金融商品に係る損益通算範囲の拡大について考えてみたいと思います。

デリバティブ取引の取扱い

デリバティブ取引は差金等決済したことにより生じた売買差損益金から委託手数料など取引に直接要した費用の額を控除した損益金額を年間(1月1日から12月31日)で通算した後の利益が課税対象となります。ただし、その年の12月31日までに決済をしていない取引の含み損益(値洗い損益)は課税対象になりません。

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また、損益通算ができる取引は、右表のとおり、国内の商品取引所又は国内の証券取引所におけるデリバティブ取引及び店頭デリバティブ取引となりますので、例えば、株式の現物及び信用取引、外国の商品取引所の先物取引などとの損益通算はできません。

金融商品に係る課税方法

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「A」、「B」及び「C」区分とも事業所得、譲渡所得及び雑所得に区分されますが、事業所得、雑所得の場合は口座管理料、投資顧問料等が必要経費に算入できます。
 また、損益通算においては「A」、「B」及び「C」区分内の所得間でのみ可能です。改正前は上場株式等の損失と非上場株式等の利益または非上場株式等の損失と上場株式等の利益はそれぞれ損益通算が可能でしたが、改正後は「A」区分と「B」区分における譲渡所得等の相互間での損益通算はできなくなりました。
 しかし、改正後の損益通算のメリットとしては、上場株式で10万円の売却損があり、債券で償還損益10万円の利益が出た場合、改正前は債券の利益10万円と株式の売却損との損益通算ができず、償 還差益10万円は総合課税の税率が課されていましたが、改正後は株式の売却損と債券の利益が損益通算され0円になりますので課税は発生しないことになります。

まとめ

「金融所得課税の一体化」の一体化とは、金融所得について一定税率による分離課税とし、金融所得間で広く損益通算
を認めるというものであるから、株式等の譲渡、公社債等の譲渡(償還)益及びデリバティブ取引による損益は申告分離課税に一本化されたこと、また、デリバティブ取引は現物の上場株式に対する リスクヘッジとして利用されることからも「A」、「B」、「C」の区分内での損益通算だけではなく、それぞれ相互間での損益通算を認めるのが望ましいと考えます。
 ただし、デリバティブ取引による損益については、差金等決済をした年(暦年)に課税が生じることから意図的に決済時期を操作することも考えられるためその防止策を手当てする必要があると考えます。

税務総合戦略室便り 第75号(2016年02月01日発行分)に掲載

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