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「持分なし医療法人」への移行と税負担(第5回)

第76号(2016年03月01日発行分)

執筆者3

高負担となる贈与税を医療法人が負担してまでも、移行するか否かの判断は、具体的には…、株価の現状分析をおこない、
 ①持分に対する〝株価対策〟を施した後の持分評価額はどうなるのか?そして、評価額から算出される贈与税負担額はどれ程の金額になるか。その負担額と、
 ②移行せずに、相続税対策として生前贈与の相続時精算課税を選択し相続した場合の税負担額(+代々にわたり負担が想定される相続税)と将来起こるかもしれない出資金返還を巡る問題(出資リスク)の評価などを加味した負担額の総体とでは、どちらが比較優位性をもつのか次第で決定されることになります。
 いよいよ、シリーズの第2回冒頭に掲げた命題に戻ってきました。

1.持分の評価

では、判断の起点となる評価額は税法上どのように算出されるのか、大きな医療法人(総合病院)と小さな医療法人(クリニック)とに区分し、比較してみます。

(1)小さな医療法人の場合

院長ファミリーだけで経営するクリニックの場合、その規模から見て小規模法人や中規模法人に区分されることになります。
 どちらも、その配分割合いわゆるL割合が異なるだけで、純資産価額と類似業種比準価額から株価を算定します。このため、純資産価額が出資持分の評価に大きく影響することになります。
 したがって、健全な経営をおこない続けてきたので、当期利益があり、繰越利益剰余金(簿価純資産額)も大きくなった法人ほど評価額は高くなります。
 病院の場合、算式中のAは、類似業種の1株当たり株価(@50円とする)で、25年平均では446円と高めです。Bは…1株当たりの配当金額4・7円、Cは…1株当たりの利益金額24円、Dは…1株当たりの純資産価額250円です。
 計算にあたって、配当のない医療法人の場合、配当Bは計算対象から外され、評価対象法人の利益金額(C)、純資産価額(D)を分子として計算されます。なお、分母は5↓4に変更されます。
 したがって、評価対象となる医療法人の1株あたりの利益額(C)は出資額の半分(24/50)、1株あたりの純資産価額(D)は出資額の5倍(250/50)が目安(標準)となります。この値に近似すると、配当のない医療法人の類似業種株価は446円(出資額の9倍)となります。結構高いので、悩ましい。したがって、純資産価額による評価もあり得ます。

【参考】類似業種比準価額算式

(2)大きな医療法人の場合

何か所もの病院を経営する大きな医療法人の場合はどうでしょう?
 規模の大きい、すなわち売上高が大きい、従事員数が多い医療法人の場合、相続等にあたって適用される株式の評価方法は、大会社ですから類似業種によることになります。
 純資産価額(総資産-総負債)のみによらず、上場された類似業種の株価を基準に、利益・配当・純資産による株価調整を加えて持分を評価します。これは、医療法人のオーナーにとって、有利な評価方法です。しかも、類似業種価額は「類似業種による株価算定の計算式」をキチンと理解すれば、贈与直前の「C=利益」や「D=純資産価額」を調整して、価額を低めにコントロールすることもできます。
 ただし、病院の場合、その業種分類は121番(その他の産業)となるため、上場された類似業種の株価は500円前後と比較的高いという難点があります。
 仮に、出資金額が1千万円で、類似業種比準法により算定される評価額がその10倍の1億円であったとすると、医療法人の負担する贈与税は5100万円となります。
 もっとも、大病院であれば前述の『社会医療法人又は特定医療法人を想定した基準』、を満たすためのハードルはそれほど高くはありません。そうであれば、いっそのこと、社会医療法人や特定医療法人そのものに認定された方が、法人税の優遇措置も受けられるため、ベターということになってしまう。

税務総合戦略室便り 第76号(2016年03月01日発行分)に掲載

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