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成功者になるための法則その25 
ふるさと納税のすすめ

category: 節税所得税
第76号(2016年03月01日発行分)
エヌエムシイ税理士法人 会長・税理士
野本 明伯

「ふるさと納税」は、2008年に始まった住民税の制度です。もちろん私も知っていました。ところが、いまふるさと納税がどうなっているのか、その現状について、私はまったく無知でした。おそらく私と同じように表面的にしか理解していない人は多いのではないかと思います。
 昨年暮れにテレビのワイドショー番組を見るともなく眺めていたら、この「ふるさと納税」を詳しく紹介していました。
 私はびっくり仰天しました。
 ふるさと納税はいま、とても面白いのです。高額納税者だけではなく、住民税を払っている人なら誰でも参加できる、とても有意義で、しかも納税者にとっても非常に有益な制度になっています。
 ものは試し。私は自分でもふるさと納税をやってみました。それはとても素晴らしい経験でした。今回は私が体験したふるさと納税の素晴らしさ、面白さ、そして意義についてレポートしてみます。みなさんも、きっと試してみたくなると思います。

ふるさと納税、嬉しい3大メリット

私はそれまで「ふるさと納税」について、田舎を離れて都会に出た人が税金の一部を田舎に納税できる制度と、漠然とそのように理解していました。ところが、それがとんでもない誤解だったと、昨年暮れに見たワイドショーでわかったのです。
 テレビ画面には、さまざまな地方の特産品が映し出されていました。そして「ふるさと納税をすれば、これ全部がたった2000円でもらえるのですよ」と言うのです。寝そべってテレビを見ていた私は飛び起きて、真剣に見始めたのです。
 私はこの番組で初めて、ふるさと納税の概要を知りました。そしてすぐにインターネットで調べ、本を購入して読み、すべてを理解しました。
 「ふるさと納税」というのは、個人が行う地方自治体への寄付のことなのです。しかし、ただの寄付ではありません。ポイントは三つあります。
 第一に、寄付した金額のほとんどは戻ってきます。寄付した金額のほとんどは翌年に支払う住民税(および所得税)の控除に充てられるので、確定申告をすれば寄付金のほとんどが所得税として一部還付され、残りは住民税分から差し引かれるのです。(条件によって確定申告の必要がない場合もある)。
 還付金として戻ってくるお金は、寄付したお金からたった2000円を差し引いた額です。10万円を寄付したら、9万8000円が戻ってくる(税金が安くなる)わけです。
 二つ目は、寄付をした自治体からその地方の特産品などの「返礼品」が送られてくる、という点です。
 各市町村の自治体は全国からよりたくさんの寄付を募りたいと考え、魅力的な返礼品を用意しています。それはだいたい、寄付した額の2~3割相当の品物になります。たとえば1万円の寄付を10カ所の自治体に行うと、それぞれの自治体から2~3000円程度の返礼品がもらえるのです。「2000円でこの品物全部がもらえるのですよ」と言う番組の裏付けは、ここにあったわけです。
 ふるさと納税の三つ目のポイントは、寄付先の自治体がそのお金をどのように使ってほしいかを、寄付する人が指定できる点です。
 住民税や所得税など一般的な税金は、実際にどのように使われているのかがわかりません。ふるさと納税では、自分で地方自治体を選び、その市町村のたとえば子育て支援、自然保護、伝統芸能の保護というように、自分の寄付をどこに使ってほしいのかを選択できます。特定の市町村の文化、教育、自然などを支援している実感が得られるわけです。

もらえる返礼品で寄付先を選ぶ

ふるさと納税は、すべてインターネット上で行うことができます。
 総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」で寄付したい自治体を選択し、それぞれの自治体のふるさと納税のホームページに飛べば、そこで手続きができます。
 しかし、それだけではどこの地方自治体に寄付すればよいか、わからないかもしれません。どのような返礼品を送ってもらえるのか、そこが知りたいというのが本音でしょう。それでいいのだと思います。
 その場合、たとえば「ふるさとチョイス」のような魅力的な返礼品を紹介するサイトもあるので、そこから地方自治体のページに行けば、希望の返礼品を送ってくれる自治体に寄付することができます。
 寄付金の支払いはネット上のクレジットカード決済が可能です。また銀行振込などでも行えます。
 確定申告は、難しいものではありません。寄付をした自治体から寄付金額の証明書が送られてくるので、確定申告書に金額を記入し、その証明書を添付するだけです。

やってみたら感動の連続に…

ふるさと納税で寄付できる額の上限は、前年の所得額によって決められています。たとえば300万円程度の年収ならば、寄付金の限度額は2~3万円程度になります。
 私が寄付できる上限は450万円でした。単純に計算すれば、たった2000円の負担で450万円の2~3割相当の額の地方特産品の数々がもらえる、というわけです。
 私は俄然やる気が出てきました。
 しかし、もう12月の中旬でした。
 ふるさと納税は毎年1月1日から12月31日までの1年間で区切られていますから、残り2週間で寄付したい自治体(欲しい返礼品)を選び、手続きする必要があります。
 大変な作業でしたが、100万円ほどの高額も含め、45カ所の自治体に限度額分の寄付を完了しました。
 翌月、新しい年になると、毎日のようにどこかの地方自治体から返礼品が送られてきました。段ボールを開けるのは、とても楽しみです。そして、送られた特産品に感動を覚えることも少なくありません。
 記憶に残っている返礼品とその寄付額を、いくつか紹介しましょう。

 
▼北海道様似町
日高昆布セット、寄付額2万円。一級品の昆布は素晴らしい味で感動しました。
▼静岡県西伊豆町
魚の干物(定期便)、寄付額30万円。1月はキンメダイ、2月はシャケでした。これも美味しくてびっくりでした。
▼奈良県吉野町
椎茸(定期便)、寄付額3万円。生椎茸が2回、干し椎茸が1回、合計3回です。届く前に実際の生産者の方から、椎茸の栽培状況について電話をいただきました。品物が届くと手紙も入っていて、心が温まりました。
▼北海道浜中町
生ウニと塩水ウニ、寄付額1万円。獲れたての素晴らしい味で、1万円でこんなにしてもらっていいのかと思うほどでした。
▼静岡県焼津市
花鰹(定期便)、寄付額10万円。最高級の花鰹500グラム入りの袋が6袋セットで、8回送られてきます。1週間で1袋使って1年分の計算ですが、とても使い切れません。贅沢に使っています。
▼岩手県陸前高田市
鮑とウニのセット、寄付額3万円。いままで食べた鮑の中で一番ではないかと思うくらいに美味しくいただきました。
▼鹿児島県西之表市(種子島)
安納芋(サツマイモ)、寄付額2万円。とても食べきれない量なので、社員全員に配りました。みんな大喜びで、とても嬉しい思いをしました。

富裕層ほど優遇される制度なのか

ふるさと納税では、寄付金の限度額が1万円の人も450万円の人も、同じように寄付した額から2000円を引いた額が還付金として戻ってきます。そのうえで各地方自治体から寄付額に見合った素晴らしい特産品が送られてくるのです。このため、雑誌などでは「富裕層ほどトクする制度」と揶揄する記事も見かけます。
 しかし私は、そうは考えません。高額納税者はたくさんの税金を納めているのですから、これは「ご褒美」と考えればよいのです。税金をたくさん納めれば納めるほど、ご褒美も大きくなる。それは誰でも同じで、まったく平等です。
 ふるさと納税を行うと、寄付によって好きな自治体の特定の活動に貢献できるだけでなく、それまで知る由もなかったその地方の素晴らしい特産品を楽しむことができます。私も実際に経験して感動しました。
 それでどう思ったかというと、「もっと税金を納めてもいいな」ということでした。税金を納めるほど、大きな感動がもらえるからです。
 地方の自治体によっては予算がないところもたくさんあります。日の当たらない自治体も少なくありません。そういうところにも、歴史的に伝わる素晴らしいものが何かしら存在しているものです。
 寄付を送れば、こちらが驚くほど感謝され、喜ばれ、有名ではないけれども品質は素晴らしい特産品を送ってくれます。その町も喜ぶし、その特産品の生産者も喜び、潤います。
 寄付した人も貢献した充実感を感じるし、素晴らしい特産品に感動し、その地方をあらためて評価します。しかも、さらに納税意欲が増す、というわけです。納税意欲がわくということは、自分の仕事をより頑張れるということで、ひいては日本経済の活性にもつながります。
 ふるさと納税は、良いことづくしのように思えるわけです。

地方活性化の大きな原動力に

ふるさと納税は、もともと地方創生の一貫として考えられ、始まったものです。当初は寄付に対する返礼品などはなく、寄付する人もほとんどいませんでした。
 ところが現在、各自治体は自分の市町村をアピールして少しでも寄付をしてもらおうと、返礼品に工夫を凝らしています。自分たちの特徴を出した返礼品にしようと、みんな必死なのです。
 実際に寄付をしてみると、特産品だけでなく、そこの人たちの感謝の気持ち、ふるさとを大事にする情熱までもが一緒に段ボールに詰められて届きます。それは、返礼品をいただいてみればわかります。
 そうした温かさはやはり、自分たちを必死にアピールして寄付を募ろうとする、小さくて貧しい地方自治体に感じられるものです。
 ふるさと納税の制度がなければ、私はそんな一地方の情熱に触れることはありませんでした。こうして寄付(お金)と返礼品のやりとりの結果、名もない地方自治体のファンが日本全国に増えていくわけです。
 このようなファンを一人でも増やそうと、いま各市町村のあいだで切磋琢磨が行われています。競争なのです。それは、地方活性化の大きな原動力になるでしょう。

切磋琢磨で成長、中小企業も同じ

これは、商売でも同じでしょう。
 いかに小さな会社でも、事業主は自分たちの商品やサービスの特徴を売り込んで、支持してもらえるように、応援してもらえるように頑張っています。メッセージを伝え、商品やサービスに真心をこめる、良さをPRする、それをコツコツと続けていく。それが商売の基礎なのです。
 ちなみに、2014年度にふるさと納税で最もたくさんの寄付を受けた地方自治体は、長崎県平戸市でした。寄付金の総額は14億6272万円にのぼります(主な返礼品は海産物)。第2位は佐賀県の玄海町で、寄付額は10億6662万円でした(主な返礼品は佐賀牛)。
 いずれも、とくに有名な自治体ではありません。それでも、知られざる良さをアピールすることで、これだけの応援を得られるわけです。
 そのためには特産品の選択、見せ方など、いろいろな工夫が必要でしょう。もちろん返礼品自体の質も重要になってきます。
 PR、宣伝、商品・サービス、すべて重要で、それが結果に現れる。これは中小企業経営もまったく同じです。名もない小さな企業でも、できることはある、ということです。

 

 

ふるさと納税、まだまだ知らない人がたくさんいると思います。決して富裕層だけの特権ではなく、年収150万円以上から恩恵に与れる制度です。この機会に挑戦してみてはいかがでしょうか。きっと新しい発見があるはずです。

税務総合戦略室便り 第76号(2016年03月01日発行分)に掲載

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