前号の続きとして海外業展開と組織再編における、税負担の軽減について説明していきます。
海外資本進出にあたっては、タックスヘイブン対策税制の適用を回避したいものです。
仮に、外国関係会社の所得が合算の対象となると、内国法人(親会社)の所得に合算され、その税負担は大きく(外国での法人税率+国内での法人税等負担率35%)なります。
また、この税制の改正は過去から頻繁になされており、改正の都度、外国子会社の在り方を再検討し再構築する必要に迫られます。
平成29年税制改正では、経済実態のないペーパーカンパニー等「特定の外国関係会社」に対する適用強化と、部分合算の対象となる「受動的所得の範囲の拡大」、例えば、持ち株割合10%以上25%未満の株式に係る配当の受動的所得化という改正がなされています。
現行制度では、外国子会社の租税負担割合20%(トリガー税率)以上であれば、タックスヘイブン税制の対象とはなりませんでした。ところが、改正後ではペーパーカンパニー等は、原則として会社単位の合算課税の対象とされました。
ペーパーカンパニーとは、次の2要件のいずれかを満たせない外国関係会社をいいます。
その主たる事業を行うに必要と認められる事務所等の固定施設を有している
その本店所在地国において、その事業の管理、支配及び運営を行っている
この税制改正に対応するため、新たに事務所を借りた海外子会社もあります。
頻繁に改正が行われているタックスヘイブン対策税制への対応が大変であるとは言え、税制の適用(回避)は海外資本進出にあたって避けて通れない税務問題です。この問題は結果として、直接、グループ全体としての税負担に関わってきます。
外国税額控除制度及びタックスヘイブン対策税制の平成21年税制改正に符合して創設された新制度で、内国法人が外国子会社から受ける「剰余金の配当等の額」は、益金の額に算入しない制度です。その内容は、持ち株割合25%以上の外国子会社から受ける配当等については、その95%が非課税となる。つまり、益金算入されない制度です。
なお、平成27年改正により、外国子会社において損金に算入されている配当については、制度の対象から除外することに改正されています。
この制度も、海外に資本進出している法人の税負担に影響を与える制度です。
節税のため、子会社への出資割合のコントロールを通じた対策が必要です。
このように、外国子会社配当の益金不算入規定の活用、組織再編税制の適用及びタックスヘイブン対策税制への対応を考えると、外国子会社の持ち株割合は25%以上が得策です。
一方、税負担の軽減と税務リスクを考えると、国内においてはグループ法人税制の適用を考慮し活用する必要があります。
グループ法人税制には100%グループ法人間の①寄付金の取り扱い及び②一定の資産の譲渡損益の繰り延べの取り扱い(法61条の13①、②)があり、これらの規定の活用を再編前後のグループ間における資産の譲渡取引に適用することも視野に入れます。
なお、②の譲渡損益の繰り延べの取り扱いは、法人を中心とするグループ法人内の取引に限り適用されるものです。
例えば、組織再編に先立ち、海外への資本投資額(投資目的有価証券に該当)をグループ内の法人に譲渡し、一定の資産の譲渡損益の繰り延べの取り扱いを利用することも可能です。ただし、税制では②の譲渡損益の繰り延べの対象となる資産を、資産単位で簿価1000万円以上に限定している(法令122条の14①)点に注意が必要です。
税務総合戦略室便り 第96号(2017年11月01日発行分)に掲載
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