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法人における税務上の要注意項目
~申告書確認表④~

第96号(2017年11月01日発行分)

執筆者12

前号では法人税を計算する上で最も重要である別表四及び五(一)の概要について説明しました。今号では具体的なチェックポイントについて解説します。

〔No・13〕前事業年度以前に所得金額に加算した有価証券若しくはゴルフ会員権等の評価損又は減損損失の額について、当事業年度に売却等の減算事由が生じたものを減算していますか。

【解説】所得金額の減算処理については、税務署では厳しくチェックします。理由はもちろん法人税が安くなっているからです。
 所得金額が過少であったとして修正申告書を自ら提出した場合には、税務署から連絡がくることはほとんどありません。
 しかし、所得金額が過大で更正の請求書を提出した場合には、高い確率で内容が適正かどうか税務署から連絡がきます。場合によっては、税務調査に発展する可能性もあります。
 具体的にどのようなポイントがあるのかを有価証券の評価損を計上した場合を例に説明します。

(例)保有している上場会社の株式の時価が下落し、評価損8千万円を計上した場合
 取得時(×1期)
 1株1万円×2万株=2億円
    ↓
 期末時(×1期)
 1株6千円×2万株=1・2億円

×1期

 ×1期に会計上有価証券評価損として計上した8千万円は法人税法上の損金の額として認められるかが最初のポイントとなります。※申告書確認表〔No・78〕
 ※〔No・78〕有価証券若しくはゴルフ会員権の評価損又は減損損失の額うち、税務上損金の額に算入されない金額を別表四で加算していますか。
 会計上と法人税法上の評価損の取扱いについてズレがあります。

時価の回復の見込みがない場合の判定等細かい論点はありますが、時価の下落率が50%未満の場合には会計上と法人税法上で取扱いが異なります。
 回復の見込みがない場合において、時価の下落率が50%未満のときは、会計上は減損処理、つまり評価損を計上しなければなりません。しかし、法人税法上は、原則として評価損計上は認められません。
 具体例については、時価の下落率は40%であり、回復の見込みがないとした場合においても原則として法人税法上の損金の額として認めることはできません。したがって、所得金額に8千万円を加算する必要があります。

×2期以降

 今回のチェックポイント〔No・13〕は、その後×2期以降の処理についての話です。会計と税務のズレがいつ解消したかを確認することになります。ズレが解消する事由としては①法人税法上の評価損の損金算入要件を充たした場合②売却した場合が考えられます。
 ①法人税法上の評価損の損金算入要件を充たした場合  
 損金算入が認められる要件を充たした場合には、当然に減算処理することが可能です。
 ②売却した場合
 上場株式であれば市場での売買であるため、売却事実・時期を確認することは容易です。
 ただし、非上場株式等の場合においては、上場株式と比較して売却価格・時期等に疑問を持たれる可能性があるため、事実関係を明らかにする資料を提示する必要があります。
 具体例として挙げた株式に係る評価損の取扱いの他によくあるのがゴルフ会員権に係る評価損です。株式と同様に市場における時価が大幅に下落したからっていって評価損の損金算入が当然に認められるのものではないため、注意が必要です。

税務総合戦略室便り 第96号(2017年11月01日発行分)に掲載

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