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金融商品と税制(10)

category: その他
第95号(2017年10月01日発行分)

中島 健雄

前回まで投資について基本的な考え方をご説明してきましたが、多くの方が投資というと危険であるとか怖いとか思われています。
 投資は適切にリスクを管理して運用すれば、危ないものでも怖いものでもありません。そう思われている方は「投資」と「投機」を混同されているためではないかと思われます。そこで今回は「投資」と「投機」についてご説明いたします。

投資と投機

投資と投機とは一般的にリスクの低いものが投資で高いものが投機、あるいは期間の長いものが投資で、短いものが投機と考えられたりしていますが、「(収益を合理的に予測できる)資産そのものの価値」に資金を投じるのが投資で、「(値上がりするであろうという)機会」に資金を投じるのが投機と考えれば違いがわかりやすいと思います。
 例えば株式の場合、資金を投じる企業を分析し、将来の成長が期待できそうな企業に資金を投じることが投資で長期保有が前提となります。企業それ自体の価値ではなく値上がりしそうな(すなわち高く買ってくれる人がいそうな)株式に資金を投じることが投機で保有は短期間となります。

株式投資の2大流派

投資に関するバイブルとも言える『ウォール街のランダム・ウォーカー』という本には「ファンダメンタル価値学派」と「砂上の楼閣学派」という2つの考え方が紹介されています。
 「ファンダメンタル価値学派」というのは、株式や不動産等の投資対象には、「ファンダメンタル(本質)価値」と呼ばれる絶対的な価値があり、現状分析と将来予測を行うことによりそれを推定し、市場価格が推定した価値を下回っていれば購入し、上回っていれば売却するという考え方で、「オマハの賢人」として有名なウォーレン・バフェット氏はこの考え方で資産を築いたといわれています。
 一方、「砂上の楼閣学派」というのは、心理的要素を重視し企業の分析ではなく市場に参加している投資家がどのように行動し「砂上の楼閣(=すなわち見た目は立派だが実態はなく崩れやすい)」を作り上げるかを分析して高く買われそうな資産を先回りして購入し売り抜けるという考え方で、有名な経済学者であるJMケインズが実践し、財を築いたといわれています。ケインズは「美人投票論」でこの考え方による株式投資(投機)を説明しています。
 美人投票が行われ、一番多く票を集めた人ではなくその人に投票した人に賞金が与えられるとします。ケインズはこの場合、自分自身の美的基準ではなく他の参加者が投票すると思われる人に投票することが正しい行動で、株式の場合も同様に市場参加者が買うと思われる株式を購入することが優れた戦略だとしています。すなわち、購入した価格よりも高い価格で誰かが購入する見通しさえ立てば、価格自体に関わりなく正しい投資となるとするのです。
 この考え方にたつと投資は自己増殖的に拡大し、どんな価格がつけられていてもその価格以上で買う人が見込まれる限り価格が上がり続けます。そして、群集心理の熱狂の中で行き着くところまでいくと急に買い手がいなくなり価格が急落します。すなわち「バブル」の発生と崩壊です。

バブルとは

「バブル」は、過去から色々な国で繰り返し発生してきました。また、最近でも「仮想通貨バブル」とか「不動産バブル」という言葉が新聞紙上を賑わせており、「バブル」ではないかといわれています。
 一般に「バブル」というのは、「資産の価格が上昇を続け適正な価格(ファンダメンタル価値)を上回り異常に高い状態が続く現象(すなわち市場が異常に過熱している状態)」を指しますが、適正な価格がいくらであるか誰もわからないために「バブル」が崩壊して初めて「バブル」であったことがわかるというのが実態です。
 また市場の参加者の多くは、往々にして群集心理におかされており、ケインズのような賢明で冷静な人物でもない限り「バブル」に呑み込まれ結局損を被ってしまいます。過去の先例から学ぶ意味でも次回は、歴史上有名な「バブル」について説明したいと思います。

税務総合戦略室便り 第95号(2017年10月01日発行分)に掲載

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