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国際課税の話(その15)

第95号(2017年10月01日発行分)

立石 信一郎

今回から、海外の関連会社との間の役務提供取引について、自分なりに整理している、対価の請求の必要性、対価の金額の決定等に関する一連の考え方を説明します。

まず、役務提供の対価を請求する必要があるかどうかの判断基準を説明し、次に対価を請求しなくてもよい役務提供の内容に触れ、その後、対価を請求しなければならない場合に、どのように対価の額を決定しなければならないかを説明します。
 以下、取引を通じた海外への所得の移転に対処するために制定された、「移転価格税制」上の役務提供取引について説明しますが、取引がイメージしやすい日本の親会社が海外の子会社に対して、役務提供を行っているケースに基づき説明します。

対価の請求について

親会社が海外子会社に対して役務提供を行なった場合、海外子会社からその役務提供の対価を収受すべきというのが原則的な考え方です。親会社が受け取るべき対価を受け取っていなかったり、対価の金額が少ないと判断された場合には、移転価格課税を受けるリスクが生じます。
 しかしながら、親会社としては、海外子会社の業績が芳しくない場合には、余り対価を請求したくないという判断もありますし、反対に業績好調な海外子会社から資金を吸い上げたい場合には、多くの対価を請求したいという判断もあると思います。前者の場合、日本において課税リスクが生じ、後者の場合、外国において課税リスクが生じます。
 このような課税リスクを回避するためには、どのような場合に、どのような対価を請求しなければならないか(請求しなくてもよいか)を理解した上で、対価の額を請求する必要がある場合には、合理的な範囲内で対価の額を決定する必要があります。対価を収受するとした場合、対価の金額算定には判断の余地があります。

対価請求の必要性の判断基準について

まず役務提供を行った場合に、対価を請求しなければならない理由について、国税庁が移転価格税制の適正な執行を図るために、国税部内の職員に対して示している「移転価格事務運営指針」に基づき説明します。
 事務運営指針において、親会社が海外子会社に対し、経営・財務・業務・事務管理上の役務提供を行う場合において、対価の請求を行うべきかどうかは、海外子会社に対する役務提供が、海外子会社にとって経済的又は商業的価値があるかどうかにより判断することとなっており、価値のある役務提供を行うのであれば、当然対価を請求すべきということです。
 具体的には、親会社が他の第三者に対して同じ役務提供を行った場合に、対価を請求できる性格のものであったり、あるいは海外子会社が親会社から役務提供を受けなかった場合に、海外子会社が自らこれと同じ活動を行う必要があるような性格のものであれば、経済的又は商業的価値があると判断されます。
 税務調査において、海外子会社への役務提供について、対価を授受していないことが問題となった場合には、役務提供に経済的又は商業的な価値がないので、第三者に対して同様の役務提供を行ったとしても対価を請求することはないというような主張をすることになります。しかしながら、役務提供の内容によりますが、このような主張を行って税務当局を納得させることはなかなか難しいと思います。
 なお、事務運営指針には、①予算の作成又は管理②会計、税務又は法務③情報通信システムの運用、保守又は管理④資金の運用又は調達⑤製造、購買、物流又はマーケティングに係る支援⑥従業員の雇用、配置又は教育⑦従業員の給与保険等に関する事務⑧広告宣伝など12の活動が例示として挙げられており、その範囲はかなり広いものとなっています。
 また、実際に海外子会社に対して役務提供を行っていない場合でも、海外子会社に役務提供を行うための人員や設備を配置していれば、このような状態自体が役務提供と判断され、対価の請求の対象となることに注意する必要があります。
 次回も引き続き海外関連会社との役務提供取引について説明いたします。

税務総合戦略室便り 第95号(2017年10月01日発行分)に掲載

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