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海外事業展開と組織再編(前編)

第95号(2017年10月01日発行分)

執筆者3

既に海外展開を行っている企業グループは製造業を中心に多いかと思います。また最近では、サービス業の分野での海外展開を図る企業グループも増えてきています。そこで税負担を考えた場合、海外法人を含めた組織を如何に再編するのが良いのかを考えてみます。

再編にあたっての視野

再編にあたって、グループ全体としての税負担を少なく、製造・卸と保険・不動産・金融サービスといった事業分野別にグループを再編成させるのか?現在の資本関係を組み換えるのか?その場合、再編作業にあたって先ず視野に入れるのは次の4項目となります。

  • 海外法人への国内組織再編税制の適用可否
  • タックスヘイブン対策税制への対応
  • 海外子会社配当の益金不算入の活用
  • 国内におけるグループ法人税制の活用

これら4点を念頭に再編図を描き、再編方法と節税策を考え講じることになります。これらは具体的な個別事例に従って検討することになりますが、検討にあたっての一般的に留意すべき事項は次のとおりです。

留意事項

〇組織再編税制の活用

国を超えた組織再編を行う場合、税負担なく行えると良いのですが、国内法人の外国子会社が外国において組織再編成を行う場合に、外国での組織再編成に対する日本の課税上の取り扱いが明確ではないという税務リスクが依然として残されており、このことが、海外展開に支障を来しているといわれています。
 そこで現状では、国際的な事業再編に際して、再編による税負担を発生させないようにするための手法として、現物出資や現物分配を利用した株式の移転が使われています。
 各国の税制度の中に、一定の条件の下においては、再編時における株式譲渡益の課税を繰り延べる制度があるからです。ただし、各国によって微妙な税制の違いや例外規定があります。このため、実施にあたっては、前もって関係各国の税務専門家に相談することが必須となります。
 日本の税法では、現物出資による再編に当たって、外国法人に対する国内にある事業所に属する資産又は負債 (外国法人の発行済株式等の総数の25%以上を有する場合のその外国法人の株式を除く)の移転は、原則として適格現物出資から除かれています(目的物要件という)。
 しかしながら、条文の括弧書きを適用して外国子会社の株式を(適格)現物出資することができます。

【事例1】

事例1のように、「適格現物出資」を適用してシンガポール子会社Bを、タックスヘイブン対策税制上において有利な取り扱いを受けている地域の統括会社化することは可能です。
 また現物分配を利用した株式の移転を行うことにより、事例2のように孫会社を直接の傘下(子会社)に組織再編することも出来ます。

【事例2】

この場合、子会社Bは国内法人ではないので、「適格現物分配」とはなりません。
 ただし、発行済み株式の25%以上を保有する外国子会社から支払われる配当については、外国子会社配当の益金不算入を適用して、95%相当額が益金不算入となります。
 なおシンガポールにおいても、株主への配当は免税所得となります。

税務総合戦略室便り 第95号(2017年10月01日発行分)に掲載

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