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事業承継税制①

第95号(2017年10月01日発行分)

執筆者7

今回から事業承継税制について解説していきます。
 いずれも大事な点と思われることを紹介しますが、必要に応じ繰り返す点もありますので、ご容赦ください。
 事業承継税制……具体的には、非上場株式の贈与税及び相続税の納税猶予制度のことを指します。ここでは、「事業承継税制」で統一します。

事業承継税制で気を付けるべき点 

事業承継税制は、納税猶予制度なので、税金が一時期猶予されます。しかし、当然ですが要件を具備しないと猶予されません。また簡単に適用できる制度ではなく、最終段階までいくつもの壁があります。
 事業承継税制が一旦適用になってからでも「これで一安心」とはなりません。
 この制度を適用した後でも、いくつかの要件から外れると猶予になった税金ばかりか、利子税という「おまけ」まで納付することになるので、かなり厄介な制度といえます。
 そういう制度ですから、税理士が躊躇するのもしょうがないとは思います。「適用できたのに適用しない」となると、納税者から損害賠償請求されることにもなりかねないため、(税理士にとっては)本当に頭の痛い制度です。

弊社のオーナー社長へのアプローチ

弊社のオーナー社長からも事業承継税制のニーズが高まっており、かくいう私も避けて通れない道となっているのが現状です。
 非上場の株価を合法的に下げるには、オペレーティングリースの導入などある程度大きな資金が必要になるのですが、事業承継税制では、お金がかかりません。
 オーナー社長からすれば、「お金がかからず、節税できるのであれば、それに越したことはない」と考えるのは当たり前のことです。
 そこで、私個人としては、現在次のようなスタンスで事業承継税制と向き合っています。

①「自社株が高い」などの理由で物的な事業承継(後継者への株式の移動)で悩んでいるオーナー社長がいたら、積極的に、事業承継税制についてアナウンスする。その際には途中適用できなくなった時の利子税などのリスクも説明する。

②もし、それでオーナー社長から「是非この制度を使ってみたい」と希望があれば、適用できるかどうかその会社を適用項目ごとに詳細に検証する。

③専門書または国税庁並びに中小企業庁のホームページによる改正などの再検証をこまめに行う。

④複数税理士との意見交換を積極的に行う。

事業承継制度ができた由来

国税庁の文書から要約すると……
 『我が国の中小企業は、経営上の意思決定を迅速化し、安定的な経営を行うため、経営者と同族関係者で株式の大半を所有している会社が大半を占めている。
 こうした中小企業の経営者の死亡に伴う事業承継に際しては、株式(=議決権)の分散を防止し、安定的な経営の継続を確保することが重要である。
 さらに、相続以前の早期の事業承継に取り組むことが重要になっていることを踏まえ、相続による経営承継と同様に単なる財産としての株式等の贈与ではなく、経営の完全な承継に伴う株式等の贈与について、贈与税の特例措置を講じたものである』としています。
 要するに、中小企業は日本にとっても大切な経済の基盤だから、事業承継の円滑化を通じ、地域経済を含む日本全体の経済活力を維持することを目的としたものであるといえます。

改正でますます使い勝手の良い制度へ

平成25年度から29年度において次の要件等が改正されました。

  • 事前確認制度
  • 後継者の要件
  • 先代経営者の要件
  • 担保提供
  • 納税猶予期限の確定事由
  • 納税猶予税額の計算
  • 納税猶予の認定取り消し
  • 贈与時における暦年課税制度から
    相続時精算課税制度の適用拡大

 平成24年度以前の中小企業庁調べによると、経済産業大臣の認定件数が、相続税64件、贈与税68件に留まるなど「絵に描いた餅」であり、実効性が薄い制度であったようです。

(次号に続く)

税務総合戦略室便り 第95号(2017年10月01日発行分)に掲載

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