今号から、法人税を計算する上で最も重要である別表四及び五(一)について具体的に解説したいと思います。
申告書確認表には会計上の利益から法人税の課税標準となる所得金額を計算するための別表について確認すべきポイントがNo.11から15に記載されています。
各ポイントを確認する前に各別表の概要について説明します。
法人税額を計算する課税標準となる所得金額は、会計上の利益とは異なります。
(会計上)利益=収益-費用
(税法上)所得=益金-損金
算式は似ており、一致する部分も多いですが、収益≒益金、費用≒損金であり、結果として会計上の利益と法人税法上の所得金額は一致しません。この会計上と法人税法上の差異を調整するために、会計上の当期利益(税引後)をスタートとして調整を加えることで所得金額を計算します。
会計上と法人税法上の考え方が完全に一致していればこれほど楽なことはありません。その場合には、税理士も必要なくなってしまいますが……。
実際の別表四は、1欄から48欄まであり、会計上の当期利益にプラス(加算)マイナス(減算)して所得金額が計算できる仕組みになっています。決まった調整項目についてあらかじめ印字されています。実際には9・10・20欄のみが空欄で、残りの欄には全て調整項目が印字されています。各調整項目の多くが、別表五以降の別表で計算されて転記されることになります。
税務署管轄の中小企業の場合には、会計と税務の調整項目が少ないため、あらかじめ印字された調整項目で事足りることが多いです。しかし、ある程度の規模の法人や上場企業等は調整項目が多く、空欄が3か所しかない別表四1枚では足りません。私も国税局時代に最高で別表四だけで数十枚ある法人をチェックしたことがあります。
会計上と税務上の取扱いが異なる部分があるため、当然に損益科目だけでなく、貸借科目も差異が生じます。その差異を調整するのが別表五(一)です。
別表五(一)は、次のように大きく2つの部分に分かれています。
別表五(一)の記載を苦手としている税務署の職員、会計事務所の職員は非常に多い印象があります。基本的には税務上の調整において「留保」された部分を別表五(一)で管理していきますが、「留保」「社外流出」の違いが曖昧な人が多いです。また、特に間違いが多いのが「資本金等の額の計算に関する明細書」の部分の記載内容です。法人税法上の「資本金等の額」は何もなければ会計上の資本金・資本準備金等を記載するだけですが、合併等の組織再編があった場合には、複雑になり誤りが多くなります。所得金額に影響することが少ないため、税務署もきちんと見ていないことも多いです。
次号以降で具体的チェックポイントについて検討したいと思います。
税務総合戦略室便り 第95号(2017年10月01日発行分)に掲載
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