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国際課税の話(その14)

第94号(2017年09月1日発行分)

立石 信一郎

今回の「本店配賦経費」は、外国法人(外資系法人の日本支店)が、海外の本店から役務提供を受けたことにより請求される費用の問題です。大手の外資系金融機関になると、その請求金額は年数億円にもなり、その利益に与えるインパクトの大きさから、外国法人調査においては重要な検討項目でした。

本店配賦経費について

本店配賦経費は、本店が海外にある支店のために行っている、会社本来の事業に関連しない業務について、その業務のためにかかった費用の金額を、一定の計算方法で各支店に配分して請求してくるものです。
 従来、この本店配賦経費に関する規定等はありませんでしたが、平成26年度税制改正により、外国法人に対する課税原則の大幅な見直しが行われた際に、法人税基本通達に本店配賦経費の意義や計算についての規定が追加されました。
 海外の本店で発生し、全世界の支店への配分対象となる費用としては、①外国法人全体に係る情報通信システムの運用、保守又は管理、及び②外国法人全体に係る会計業務、税務業務又は法務業務に関する費用が例示として挙げられています。また、計算方法については、本店で発生する費用を、個々の業務ごと、かつ費目ごとに合理的な基準により配分することになるのですが、個々に計算することが難しい場合には、当該費用の全額を、配分の対象となる各支店の売上総利益の割合により配分することができるとしています。

本店配賦経費の計算について

本店配賦経費の計算方法は、合理的か否かが重要な判断基準であることから、法人によって、考え方や計算方法等が様々であり、結果としての本店配賦経費の金額も大きく異なります。合理性の範囲には幅があることから、方法を選択することにより様々な金額を出すことも可能であるような印象を持ちました。
 配分の対象となる経費については、日本支店に関連のある経費のみを厳密に抽出しようとすれば、金額は比較的小さくなり、海外の支店に関係すると思われるあらゆる費用を対象とし、それを各支店に配分するという方法をとれば、金額は大きくなります。
 配分に使用する要素も、売上、資産、人件費など合理性を説明できれば様々なものが考えられ、使う要素によって結果の金額も大きく変わってきます。実際に経験したものとしては、本店の情報通信システムを使用している場合に、キーボードにタッチする回数を自動的にカウントし、その回数の割合により、該当する費用を配分しているようなケースもあり、明らかに不合理であることを立証しなければ、その配分方法を否認することは困難です。

本店配賦経費の調査について

調査に当たっては、配分された経費の中に、損金とはならない交際費や寄附金等がないかとの観点からも検討を行います。
 また、計算方法の合理性が問題となるパターンとしては、様々なものがあります。自分が経験したものとしては、金融機関で期末の資産の金額に基づき本店配賦経費が配分されていましたが、期末の資産を大きく見せたいという業務上の理由等から、期末に特定の支店との間で巨額の貸付金と借入金の両建て取引を行い、結果としてその水増しされた資産の金額に基づき、過大な費用が配分されていることを問題としたことがあります。
 税務調査においては、本店配賦経費の合理性を確認できる証拠資料を提出させるのもポイントとなりますが、法人税法(以前は、法人税基本通達)には、「本店配賦経費につき、その配分に関する計算の基礎となる書類(中略)の保存がないときは、その書類の保存がなかった本店配賦経費については、(中略)損金の額に算入しない」という、証拠資料がない場合の否認規定があります。ただし、この規定を適用して否認したとしても、一定の証拠資料が提出されれば、課税処分を取り消すこととなるので、その適用は難しい面があります。

次回は、海外の関連会社との間の役務提供取引に関して、対価の請求の必要性、対価の金額等に関する考え方について整理したいと思います。

税務総合戦略室便り 第94号(2017年09月1日発行分)に掲載

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