いわゆるストックオプションについては、オーナー会社における事例は少ないと思いますが、例えばオーナー様のご家族等の勤務先から付与を受ける場合などで質問があることから、今回は、それに関して誤りやすい点に触れることとしました。
まず始めにストックオプションについて簡単に説明します。
ストックオプションとは、会社が役員や使用人に対し付与した新株予約権のことをいいます。
付与された新株予約権は、一定期間後に、予め決められた価格で、その権利を行使し、株式を取得することができます。したがって、付与された以後、行使時までに株価が上昇していれば、その行使時の時価と行使価格の差額が経済的利益ということになります。
この経済的利益についての所得税の取扱いは、ストックオプションの制度が、付与される役員や使用人に対するインセンティブであることから、給与所得になります。
一定の条件を満たす場合には、付与された新株予約権の権利行使によって得た経済的利益が非課税になり、これを税制適格ストックオプションといいます。
税制適格になるためには、付与された新株予約権の権利行使が、付与決議日から2年後かつ10年以内に行使されること、権利行使価額の合計額が、付与された者からみて、1年間で1200万円以下であること、その他の要件を具備していることが必要となります。
ストックオプションを付与された役員や社員は、通常、一定時期にその権利を行使するとともに譲渡します。それによって、行使価額と売買価額の差額を受け取ることができます。
この金額が給与所得として課税されるのか非課税になるのかは、これまで説明しました。
それとは別に、株式の売却による譲渡所得が発生します。この場合の譲渡所得の取扱いが今回の眼目になります。
計算例を示しますと次の設例のようになります。
①ストックオプション付与 平成27年〇月〇日
千株(時価@千円)
②権利行使期間 平成29年〇月〇日
~29年〇月〇日
③権利行使価額 100万円(@千円)
④行使した日 平成29年8月10日
(同日売却)
⑤行使日の時価(売却価額)120万円(@1,200円)
⑥その他
従前に同一銘柄の株式を次のとおり取得し、
保有している(今回も売却していない)。
90万円(@900円、千株)
この場合には、権利行使により得た経済的利益20万円が非課税になる反面、売却したことによる譲渡所得の計算における取得原価は行使価格の100万円になります。(計算式①参照)
税制適格ストックオプションを行使して取得した株式については、他に同一銘柄の株式を保有していたり、また、同時に売却した場合でも、別銘柄の株式であるとみなして計算します。
権利行使により得た経済的利益20万円は給与所得として課税されます。課税された所得で120万円の株式を購入したことになります。この場合の譲渡所得の計算は計算式②となります。
税制不適格ストックオプションを行使して取得した株式については、株式譲渡の原則どおり、総平均法に準じて算出します。
120万円-100万円=20万円(譲渡利益金額)
20万円×20%=4万円(国税・地方税)
120万円-105万円=15万円(譲渡利益金額)
※取得価額(総平均法に準じて算出)
(90万円+120万円)×千株/2千株=105万円
15万円×20%=3万円(国税・地方税)
どうでしょうか。専門家でも、税制不適格の場合の譲渡所得について、単体で計算して譲渡所得をゼロとしている場合があるので、要注意です。
税務総合戦略室便り 第94号(2017年09月1日発行分)に掲載
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