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税務総合戦略室 室長通信 第六十一回
AIによる税務調査の時代

第94号(2017年09月1日発行分)

執筆者1

2017年6月23日、国税庁は「税務行政の将来像」と題したプレスリリースを公表しました。人工知能(AI)を導入し、情報通信技術(ICT)やマイナンバーなどの活用を推進することで10年後を目途として税務行政のスマート化を目指すとしています。
 将来的には納税者がインターネットのチャットを活用した税金の相談や、相談内容を分析して適切な回答を自動表示できるようなシステムを開発します。
 さらには税務調査の分野においてもAIを活用していく方針のようです。

下がり続ける調査率

経済取引がグローバル化、資産運用が多様化する中で、国税職員の定員の減少や申告件数の増加により調査が複雑・困難化しているといわれています。
 実際に、平成元年と比較して平成27年には所得税・法人税ともに申告件数が1.3倍に増加しているのに対し、国税庁の定員数はピーク時より2.7%減少しています。その結果、どれくらいの割合で税務調査が行われているかを示す「実地調査率」は下がり続け、法人の場合3.1%、個人では1.1%という極めて低い数値となっているのです。3%という数字は100社のうち、わずか3社しか税務調査が行われていないという意味になります。
 新しい技術により業務を効率化することで創出されたマンパワーを税務調査の人員に振り向ければ、低下した税務調査の件数を増加させることも可能になるでしょう。
 最も気になる点はAIの導入が税務調査そのものにどれほどの変化をもたらすのかということです。

変わっていく税務調査

わずか3%だけの会社に対してしか税務調査を行えていない状況において、その対象は必要度の高い悪質な脱税者であるべきです。問題はその必要度の高い調査先をどうやって的確に見つけ出すのかにあります。
 プレスリリースでは調査の選定方法について次のように述べています。
 『調査の必要性が高い大口・悪質な不正計算が想定される事案を的確に選定する観点から、過去の接触事績や資料情報のシステム的なチェックに加え、統計分析の手法を活用することにより、納税者ごとの調査必要度の判定を精緻化するとともに、最適な接触方法や調査が必要な項目についても、システム上に的確に表示されるようになることが望ましいと考えています』
 様々な蓄積情報を基に調査が必要か否かをAIが判断するということでしょう。今までのように黒字会社を対象とした3年~5年おきの周期的な税務調査から、本当に調査しなければいけないところが選ばれるようになれば喜ばしいことです。
 実際の税務調査手法はどのように変化していくでしょうか。警察の捜査はDNA鑑定や防犯カメラ映像の解析など科学捜査の進展により、状況証拠や自白をよりどころとした過去の捜査とは大きく変貌を遂げました。
 税務調査も調査官個々の調査能力に依存するやり方から調査技術(品質)の均一化が求められます。いつまでも「今回の調査官はラッキーだった」「厳しい調査官に当たってだいぶ痛い目にあった」では困るわけです。
 人間は一定の睡眠時間を摂らなければ生きていくことはできませんが、人工知能は情報さえ与えられれば、休むことなく学習し進化を続けることができます。これまでの調査ノウハウを蓄積し続けることでベテランの調査官を凌駕する知恵を手に入れることが可能なのです。
 チェスや囲碁・将棋のトッププロがコンピュータに敗れる時代です。我々にとってもAI調査官は手ごわい相手となるでしょう。しかし、将来のAI調査官がどんな一手を打ってくるのか、彼らとの知恵比べを想像し心躍らせてもいるのです。

税務総合戦略室便り 第94号(2017年09月1日発行分)に掲載

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