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元国税調査官のひとりごと 第34回
本当にあった怖い話(その2)

第93号(2017年08月01日発行分)

伊藤 徹也

前号で、社長名義の帳簿に載っていない預金が把握されたことまで書きましたが、その続きです。

1 預金の中身の検証

預金への入金、出金の区別ごとに時系列で預金の内容を整理し、振込元の申告状況、内容確認、支出先の内容確認(反面調査)銀行調査で入出金時の受発信記録、振替伝票で入出金の同日付、同時刻で相手先預金へのひも付きがないか。
 貸金庫の開閉履歴と出金日に連動がないかなども確認しました。

2 再度の訪問

ある程度の状況が確認できた後で、再度会社に訪問することになりました。
 その時の対応は三者三様で、社長は、反面調査した取引先から連絡が入っていたようで、「この間で終わったのではないのか、これ以上何調べるのだ」と言って私に凄んできました。
 奥様には、銀行から連絡が入っていたようで、今にも泣きそうな顔でかしこまっています。
 顧問税理士は、何も聞いていない様子で「ずいぶん時間が経ちましたが、今日は結果説明ですか」と言っていました。

3 調査の大詰め

奥様に勧められて席に就こうとしましたが、社長からは「何の用だ」「もう帰れ」とまくしたてられ、話が進まない様子です。観念した奥様が「何をご用意すればいいですか」と。
 「銀行から連絡が入っているようですので、率直に聞きますが、あの通帳や印鑑はどこにありますか、そこまで案内してくれますか」と言うと、社長と奥様に、ぴくっと反応がありました。
 ここで顧問税理士が「現況調査みたいなことするのですか、こんな赤字決算なのに一体何を疑っているのですか」と  ……。
 それでもさらに「確認させていただけますか、社長」と詰め寄ると、さすがに何かあると思ったようで、社長の方を向いて反応を見ています。奥様が「どうぞ確認してください、良いわね社長」と言うと、社長自ら自宅に案内してくれました。金庫の前で「社長さん、金庫の中身を出してください」該当の預金通帳の他に通帳数冊と印鑑、市販の領収書がありました。
 そこで社長は、ぽつぽつと経緯を話し始めました。
 以前から自分の小遣い稼ぎのために、現金で受け取る単発小口売上は、市販の領収書を切って除外していたが、息子の大学進学、娘の結婚などお金が必要になり、受注を増やすと同時に除外金額も増やしていきました。現金で受領したものだけでは賄いきれなくて、法人設立前に使っていた口座を受け皿に奥さんの旧姓名義口座を経由すれば、ばれないと思っていたこと等を話してくれました。

4 貸金庫の中身

貸金庫も社長に同行して確認をしましたが、入っていたものは、手紙や写真(これは奥さんに内緒)、古い掛け軸、腕時計など社長の趣味の世界がそこにありました。
 ここまでくると社長もかなり落ち着いてきて、貸金庫外の個室で写真に写った女性とのなれそめ話や、掛け軸を見せてくれたりしました。余談ですが、素人目に見ても、この掛け軸は偽物というか価値のあるものとは思えず、さすがに社長には言えませんでした。

5 後日談

この案件は別の部署に引き継がれて処理されたのですが、掛け軸はやはり偽物で、ほとんど価値のないものだったそうです。
 引き継ぐにあたり、社長はすっかり反省していましたし、あまり厳しい話はしなかったのですが、どうしても、かわいそうだったのでこれだけは社長に苦言を呈しました。
 高校を卒業したての新入社員が、何も知らされずに、この売上除外に関する請求書を作らされていたことで、引継ぎのマニュアルに、請求書作成の手順が書かれていて、「作成データは保存せずに上書きする」といった指示まで記載されていました。この新入社員の親御さんが聞いたらどう思うか、娘を持つ親としては、胸が締め付けられる思いです。
 この話をしたときには、さすがに社長も、うなずき、涙されていました。
 次回は、「経費を多く申告する」についてです。

税務総合戦略室便り 第93号(2017年08月01日発行分)に掲載

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