税務総合戦略室便り

HOME >  税務総合戦略室便り >  第93号 >  広大地評価通達の廃止

広大地評価通達の廃止

category: その他
第93号(2017年08月01日発行分)
元国税調査官・税理士
黒崎 俊夫

財産評価基本通達に設けられているいわゆる「広大地評価」の規定が本年限りで廃止されることが、国税庁のパブリックコメントで明らかとなった。
 パブリックコメント(パブコメ)とは、行政が通達などの改正を予定している場合に、広く一般に意見を求めるため事前に案を公開し、その意見を反映させようとするものだが、前回の株式評価方法の改正のように、たいてい原案のとおり決まるのが常であるから、この広大地規定も廃止されることになると思う。

広大地評価とは「一定の規模(都内の場合500㎡以上)の宅地の評価については、正面路線価に次の*1の広大地補正率を乗じて計算した金額にて評価する」というものであり、「評価できる」という「できる規定」ではなかった。
 例えば1㎡あたり20万円の土地を2千㎡所有する場合の評価額は通常計算だと4億円だが、この広大地補正率を適用すると2億円と半減する。

また、右の*2は広大地補正に代わって新設される見込みの「規模格差補正率」であるが、これを適用すると価額は3億円となり、減額幅は従来の半分に縮小される。
 以前から私はこの広大地補正について、非現実的で大甘な規定だと思っていた。ケースにもよるが、この減額率は大きすぎ、地方はともかく特に都内では、地積が大きくまとまった土地は希少性があるため、むしろ相場より高く売れた事例も多くみられた。

広大地の規定が設けられたのは平成16年であるが、それ以前には路線価を使わず鑑定評価に基づく相続税申告が多く提出されていた。そしてその多くは都市近郊の市街化区域の農地に関するものであった。
 市街地農地の評価は宅地比準方式といって、付近の宅地の価額からその農地を宅地化するための造成費相当額を控除して求めるのだが、通達に規定する造成費の金額が現実的でなく、面積が広い農地は特に、求められた評価額は時価を反映しないものが多かった。
 そこで通達評価ではなく鑑定評価での申告となるわけだが、私も10数年前赴任した税務署で前任者の積み残した鑑定評価による申告書の処理を相当数行った記憶がある。

何が言いたいのかというと、通常の職員では不動産鑑定士が作成した鑑定評価書の理解は難しい。だからその鑑定評価事案を減らすため、通達で補正率を定めて普遍化、客観化して裁量の余地をなくし鑑定申告を減らすことが、この広大地評価規定を設けた理由であると理解していた。
 従って補正率の中には造成費相当の斟酌分を当然含んであり、造成を必要としない既存宅地に適用させることは本来の意図ではなかったはずである。
 それを広大地なら既存宅地でも都内でも適用可能としたため、かつあまりに減額率が大きいものだから現場でも迷いが生じた。マンション適地だとかいわゆる袋地開発が可能だからとか必ずしも根拠が明確でない理由で適用を否認し、本来裁量の余地をなくすための規定であったはずが、ますます裁量の要素を強めてしまった。こんなに下がるのはおかしいとして、一職員の分際で本来適用できるものを否認する輩もいたりした。
 税理士も否認されるのが怖くて、当初申告では広大地を適用せず、更正の請求で広大地補正を適用して税金を返してもらい、還付金額のいくばくかを成功報酬で請求するようなケースもよく聞いた。やりすぎの減額率に起因する混乱だった。

今回の改正案の規模格差補正率について、一定の評価はするものの、「中小工場地区も適用範囲に含めること、比準宅地方式で評価する市街地農地については従前の広大地補正率との併用を認めること」とパブコメ意見として投稿しておいた。
 蛇足だが、10数年前に広大地規定ができて「これで不動産鑑定士の飯の種が減らされた」と思ったが、今回も「これで広大地を売り物にできなくなった」という気持ちも否定できないところでもある。

税務総合戦略室便り 第93号(2017年08月01日発行分)に掲載

お電話でのご相談・お申込み・お問い合わせ

全国対応いたします。お気軽にお問い合わせください。

03-5354-5222

PAGE TOP