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オーナー社長と貸付金④

第93号(2017年08月01日発行分)

執筆者7

前回は、オーナー社長の貸付金を法人に対して免除したときの効果を説明しました。
 おさらいすると、①免除すれば相続財産からは外れる②ただし法人側で「債務免除益」が発生し、法人税の対象となる③法人に債務免除額と同額以上の繰越欠損金があれば相殺可能となり、法人税はかからない④債務免除の効果として株価が上昇する場合、(免除した)オーナー社長以外の株主に対し贈与税がかかる。
 したがって、債務免除するときは、法人の状況、オーナー社長以外の株主構成をチェックすることが大切です。

会社担当の税理士と相続専門の 税理士のバトンタッチ

会社を見ている税理士さんが「相続税は経験ないから」ということで、知り合いの相続専門の税理士さんにバトンタッチするときは、貸付金も踏まえて意思の疎通を図ることが大切です。

貸付債権の贈与

ここからは、貸付債権の贈与について解説します。贈与制度には次の2種類があります。
 暦年課税ですと110万円の基礎控除、相続時精算課税ですと2500万円の控除(ただし、相続時精算課税の場合はオーナー社長相続発生時に、相続財産として加算する必要があります)が適用できます。
 特に暦年課税では、相続財産と切り離せるので、オーナー社長の年齢が若ければ若いほど長期計画として利用できます。
 また、将来の相続税と比較して贈与税が低い場合、110万円の基礎控除を超えて、あえて贈与税を納付しても有利となる場合もあります。

具体的シミュレーション

  •  ①貸付債権放棄をしなかった場合の相続税……5千万円
  •  ②-ⓐ貸付債権の贈与400万円を10年間行った場合の贈与税(親子間であれば税率がその他に比較して低くなります)……年間贈与税33万5千円×10年間=335万円
  •  ②-ⓑ貸付債権4千万円(400万円×10年間)が減った後の相続税……4300万円
  •  ⓐ・ⓑの合計……4635万円

結果、貸付債権の贈与をした方がトータルで365万円の税金を下げることができます。

貸付債権の贈与でのポイント

①贈与した事実を残すこと

貸付債権は、現金と違い、目に見えない資産ですので、オーナー社長から子供に移転した事実をきっちり残すことが大切です。
 贈与契約書に自書押印することはもちろんですが、法人税申告書の内訳書欄の「借入金」欄の氏名変更など、最低限の形式は整える必要があります。
 また、会社に余裕資金があるときには、債権の贈与を受けた者が一部回収を試みるなど、実質的な部分も満たされると、将来の相続税調査においても、「形式だけ整えたことを嫌う」税務署から指摘をされるリスクが減ります。

②身内同士の紛争回避

会社の株式にも同じことが言えるのですが、なるべくなら、その会社を引き継ぐ「事業承継者」に当該債権を贈与するのがベストと言えます。
 将来、会社にかかわらない子供に贈与した場合のことを考えてみましょう。
 事業承継者=債権を贈与してもらった者であれば、会社の状況を鑑みながら債権を回収していくと思いますが、会社と何ら関係なければ債権の回収を優先するため、万が一会社の決算状況が苦しいタイミングで債権回収を要求されたら会社の存続も危うくなっていきます(親族間なので、理解し合えるケースも多いですが)。
(次回に続く)

税務総合戦略室便り 第93号(2017年08月01日発行分)に掲載

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