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元国税調査官のひとりごと 第33回 
本当にあった怖い話(その1)

第92号(2017年07月01日発行分)

伊藤 徹也

国税当局にいた30年間の経験から世間で脱税と言われている内容について何回かに分けて書こうと思います。

1 脱税の手口はたった二つ

これは昔から言われていることですが、脱税の手口は大きく分けるとたった二つしかありません。
 1 収入を少なく申告する
 2 経費を多く申告する

会計に携わっている人なら、少なからずうなずいていただけるしごく当たり前のことです。このことは、何十年前から変わることの無い不変の事実と言えるでしょう。
 たった二つと言ってもその中身は様々な方法がありますが、どんな複雑なスキームであっても最後はこの二つに分類されるということです。
 難しい解説は別の人にお任せして、私は過去の経験からそれぞれ、実体験として「本当にあった怖い話」をしたいと思いますので、反面教師として受け止めていただければと思います。

2 収入を少なく申告する

 収入を少なく申告すると言えば、当たり前のことですが、本来売上や雑収入として受け取ったものの一部または全部を帳簿に記載せずに申告するというものです。
 国税調査官のころにすごく苦戦して解明した事例がありますのでご紹介いたします。
 その会社の確定申告の内容は、この五年間は年間数十万円の赤字が続いていて、税務調査も十数年ぶりでした。
 その十数年前の調査でも、過去に会計事務所に勤めていた奥様が帳簿をつけていて、記帳状況も良好で、申告是認(税務調査で是正事項の無いこと)を受けています。売上の規模は年商1億円弱で親族経営をしています。
 調査のポイントは、決算期末の売上漏れ、原価の前倒し、社長親族に対する給与(報酬)、販売費および一般管理費のうち個人的経費の付け込みがないかと言ったところです。
 その当時の私は、永く調査がなくて、少額の赤字が続いている会社には必ず何か問題があるという思いで調査先に選んだのですが、正直あまり自信はありませんでした。
 会社ごとのファイルには、過去三回程度の税務調査の結果や、関係者の印象、気になったところが書かれています。
 そこには、「記帳状況良好」「期末かたい」「社長は口数少ないが実直」「恣意的経理無し」と言った良いことばかり書かれています。
 唯一気になったのが、前回の調査担当者が社長の調査に対する協力状況について、「やや悪い」と書いていたことと、社長に関するやっかみのような投書があったことくらいです。

3 予想通りの展開

税務調査は二日間の予定でしたが、二日目の午後になっても何の問題もありません。税務職員たちの間では、こんな状況を「苦しいピッチング」といった表現をしますが正にそんな感じでした。
 顧問の税理士からも雰囲気を察したのか雑談が出始めています。
 最後に領収書などが貼ってある綴りを見ていると、依頼人が社長名で、会社では取引のない銀行の窓口振り込み領収書が1枚だけありました。
 役員報酬の振込銀行でもありません。
「会社の経費になっていないし、紛れ込んだだけか」とも思いましたが、念のため預金照会をしようと思い「拝見する限り是正いただく内容はありませんが、少し確認したい点がありますので、改めてご連絡差し上げます」と言って帰りました。
 税務署に戻り、統括官に状況を説明し、預金の履歴照会だけしてその結果問題がなければ早々に調査を終結させるということになったのですが……。

4 意外な展開

 預金履歴の照会の結果、社長名義(会社名での屋号登録)の預金残高こそ百万円に満たない程度ですが、数件の振込入金、窓口出金と同時に奥さんの旧姓名義預金への入金(当時はこんな預金がまだあったのです)。その後、地方大学にいる息子の学費や、仕送り、着物や娘の結婚式費用等という流れが見えてきました。
 おまけに、この口座から貸金庫の利用料が引き落とされていることもわかりました。
 このあとは、調査先会社に再度訪問することになるのですが、次号に続きを書きたいと思います。

税務総合戦略室便り 第92号(2017年07月01日発行分)に掲載

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