税務総合戦略室便り

HOME >  税務総合戦略室便り >  第92号 >  空き家に関する税金

空き家に関する税金

第92号(2017年07月01日発行分)
元国税調査官・税理士
黒崎 俊夫

平成25年の数字だが、全国の住宅戸数約6千万戸に対し空き家戸数が約820万戸、空き家率13・6%の高さが問題になっている。もっともこの数字は賃貸住宅の戸数も含んだものであり、平成15年の空き家率が12・2%なので大騒ぎするほどのことではないとも言えるが、問題は戸建て住宅の空き家戸数が平成15年の210万戸から10年間で300万戸に急増し、それが地域の生活環境に悪影響を及ぼすのではないかという懸念にある。

税務でも空き家の発生を抑制すべく昨年から「被相続人の居住用財産の譲渡(租税特別措置法第35条第3項)」なる規定が設けられた。概略は、相続により空き家となった被相続人の居住の用に供していた家屋ないし敷地を取得した相続人がそれを譲渡した場合、一定の要件に該当すれば譲渡益から最高3千万円を控除するというものである。

主な要件とは

  • ①相続開始から3年経過日の年末までに譲渡すること。
  • ②譲渡対価が1億円を超えないこと。
  • ③昭和56年5月31日以前に建築されたものであること。
  • ④区分所有建物(分譲マンション等)でないこと。
  • ⑤被相続人以外に同居者がいなかったこと。とある。

さらに詳細な取扱について政令や通達に規定されているが、質問が多そうなところをピックアップしてみた。

  • ①昭和56年5月31日以前建築の建物でも耐震リフォームした建物なら可、もしくは建物取壊し後の敷地のみの譲渡でも可。
  • ②共有で相続した場合の1億円の判定は、共有者の総額で判断する。
  • ③建物をA、敷地をABCの共有で相続する場合、適用できるのは建物と敷地を両方相続したAのみ。
  • ④元々AB1/2ずつ所有し、A死亡によりBの単独所有となった後に全部を譲渡した場合の1億円判定は全体で判定する。
  • ⑤店舗併用住宅の場合の1億円判定は、店舗部分も含めた全体の譲渡価額で判定。
  • ⑥取壊し後の更地の半分を譲渡、残りは譲渡しない場合、その半分についての適用は可。
  • ⑦病気療養又は介護等の事情で相続時に空き家だった場合は総合的に判断。
  • ⑧相続税額の取得費加算(措置法39条)との併用不可。
  • ⑨申告する場合は市区町村に「被相続人居住用家屋等確認申請書」を提出し、証明書を発行してもらう必要がある。
  • ⑩除票住民票の被相続人の住所と物件所在地が異なる場合、原則不可。

と、ここまで書いてみたが、通達もそうだが、図にして説明しないとイメージが湧かないと思う。
 触れなかったが通達には「適用前譲渡」「適用後譲渡」なる耳慣れない言葉も出てくる。

税理士が一番不得意とするのが個人の譲渡所得ではないだろうか、単発で発生するし、特例も複雑、金額も大きい。不勉強な税理士では恐くて手が出せない。私自身、不動産業者の営業マンに教えられることもある。まだこの空き家特例を適用して申告書を作成したことはないが、複雑な案件は解説書等で確認しないと安心できない。今年本特例を適用した申告が何件提出されたのか未公表だが興味深いところである。

一方、空き家について相続税の小規模宅地減額特例(措69条の4)についても触れておきたい。
 老人ホーム等への入居により空き家になった家屋の敷地を相続により取得した場合でも、次の要件を満たしていれば被相続人の居住の用に供していたものとして最高80%の評価の減額が受けられる。(平成26年以後の相続)

①被相続人が介護保険法による要介護者または要支援認定者で、老人福祉法に規定する(特別)養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、介護保険法に規定する介護老人保健施設に入居等していたこと。

②当該家屋を貸付等の用途に供されていなかったこと。等
 もっとも空き家を相続して措69を適用できるのは、自宅を有していない者、いわゆる家なき子が相続したケースに限られる。

今後空き家になりそうな住居を所有されていて、いずれ売却せざるを得ないような状況にある人にとって、節税を考える一つのヒントになるかもしれないが、税金のことを考えて、生活スタイルを変えてまで余生を送るのは本末転倒だと思っている。

税務総合戦略室便り 第92号(2017年07月01日発行分)に掲載

お電話でのご相談・お申込み・お問い合わせ

全国対応いたします。お気軽にお問い合わせください。

03-5354-5222

PAGE TOP