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オーナー社長と貸付金③

第92号(2017年07月01日発行分)

執筆者7

前号では、オーナー社長の貸付金問題として地道に回収を図る方法、ただし、①役員報酬②法人契約保険③法人所有土地など様々な箇所にメスを入れつつ解消する方法でした。

回収できないとしても、貸付金解消方法はいくつかあります。まずは、「債務免除」による方法を見ていきましょう。

債務免除の概要

「債務免除」とは貸し付けているオーナーから見れば「債権放棄」です。「会社にお金を貸したけれどもう返さなくていいですよ」ということになりますから、会社としては利益を上げてお金を返すのと同じ効果が発生します。
 したがって「債務免除益」を計上しなければなりません。
 もっとも、会社に繰越欠損金があれば相殺ができますから、債務免除しても法人税がかかることがありません。こういう背景があれば有利になります。ただしこれはあくまで「法人税」に限っただけの話です。
 ここで考えるのは株価がどうなるかという点です。
 貸借対照表上ですと、借入金が減るのですから、純資産価額(=資産-負債)が上がります。株価は純資産価額の影響を受けるため、借入金が減る=株価が上がるということを念頭に置かなければなりません。
 株主構成が次の通りだとどういうことが発生するのでしょうか。

  • ①オーナー社長は会社に貸付金がある。
  • ②その貸付金を放棄した。
  • ③(会社から見れば)債務が減ったので、株価が上昇した。

ということは、貸付金をオーナー社長が放棄してくれたおかげで、B~Eの株価が上がったということになります(Aの株価も上がりますが、自分の行為によるものであるため影響を受けません)。
 贈与の基本は「無償で財産をもらう」ということです。まさに、この行為と同列に見られることになります。
 この判断を忘れていて困るのが次のようなパターンです。

相続時における調査対象項目の一つ「債務免除と贈与の3年以内加算」

先ほどのAさんが亡くなられ、相続が平成29年7月1日に発生しました。
 Aさんが貸付金の放棄をしたのは、2年前の平成27年12月10日です。その時贈与税の申告はしていません。
 税務署は、オーナー社長の場合、かならず、経営している会社の申告書・決算書に目を通します。
 調査官は、上司の指示のもと、直前期の決算書から過去の決算書に目を通しました。そこで、3年前の決算書からオーナー社長の貸付金が無くなっているのに気が付きます。おそらく、会社が支払ったのであろうと。しかし、預貯金は、オーナーの過去の役員報酬及び退職金から形成されており、貸付金の入金事実が預貯金の通帳に反映されておりません。
 そこで上司に相談。上司からは「(本人から見たら)債権放棄したのでは」との回答。
 資産税職員は、法人税に精通していませんので、あくまでオーナー社長の財産面から追跡していきます。したがって若干時間はかかりますが、最終的には、ここにたどり着きます。そのあとは簡単です。
 債務免除(オーナーから見たら債権放棄)=純資産の増加=株価の上昇=オーナーから得た経済的利益の享受(財産は目に見えるお金ばかりではありません)。
「贈与は過去のもの」ですが、最低6年間はさかのぼることが可能です。まだ2年目ですので、時効が成立しておりません。なおかつ、相続開始前3年以内の場合、相続財産に加算されます(ただし、贈与税との二重課税を防止するため、贈与税相当分は免除されます)。
 贈与税は本来支払うべき税金であったため、やむを得ないとは思いますが、加算税・延滞税などの本来支払わなくて良い税金を支払わなければなりません。
 特に贈与税・相続税は税率が高く、大きくなりがちなので慎重な取り扱いが求められます。

税務総合戦略室便り 第92号(2017年07月01日発行分)に掲載

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