貸付金が増加する背景には次のようなことが考えられます。
①年々役員報酬を上げている⇒②会社から多額のお金が出ていく⇒③同時に業績を伸ばすための設備投資などの費用も必要となる⇒④会社の資金繰りが厳しくなる⇒⑤社長が得た役員報酬を会社に貸し付ける⇒⑥貸付の回収どころか逆に増えていく。
ご覧の通り悪循環になります。
何がまずいかというと、役員報酬には所得税がかかっており、多額の税金を引かれた後で貸し付けるのでは効率が非常に悪いということです。
まずは、役員報酬の見直しを図る(減額する)ことを念頭に置くことが必要です。
役員報酬の見直しを図るということは、会社サイドで見れば、役員報酬=経費が減少するので、法人税が高くなりますが、反面、個人では所得税が低くなります。
個人(所得税)・法人の税率差を検討することが必要です。
特にオーナー社長は「個人も法人も同じ大切な財産」という思いがあるので、トータルで見たキャッシュアウトを検討しながら、この負の連鎖を断ち切ることが必要ではないでしょうか。
まずは、地道に貸付金の回収を図る事が先決です。
そこで決算書の内容を細かく検証したところ次の事実が判明しました。
第一に、①役員報酬4千万円の引き下げを考えます。先ほど触れたように、役員報酬に対する所得税等と、役員報酬を引き下げた結果増加する法人税との比較をして、損益分岐点(どちらがより節税を図ることができるか)を検討します。
次に、②保険の解約返戻金で返済の補填を図ります。但し、解約返戻金の推移表※を見て、できれば解約返戻金が最大となる時期を検討する事が必要です。
慌てて解約し、かえって損をするようでは、本末転倒ですので、時には我慢も必要です。
※弊社では、必要に応じて、保険会社の資料から10年程先の満期返戻金の額を検討することで、将来の退職金支払い可能額を検討しています。
また、解約返戻金は半分損金算入商品(半分は保険積立金として資産計上)であれば、1千万円が雑収入となることを想定しておくことが大切です。
③不動産については、思いきって売却を検討します。
この不動産の利用価値は、ⓐ売却することで金銭が手元に入りキャッシュフローが改善できる、ⓑ固定資産税等の維持費が解消できる、ⓒ売却金額2千万円-取得費用4千万円=△2千円となり、①の役員報酬の見直し、②の解約返戻金で高くなった法人税を打ち消す効果が生まれます。
以上のように、オーナー社長と貸付金を一つの切り口として、法人税のみに留まらず、法人所有土地に対する固定資産税、オーナーの現在の所得税・将来の相続税など複数の税目を併せて検討します。
これが、まさに弊社のサービスの特徴といえます。
代表者貸付金の回収がうまくいかない場合もあります。そこで、他の3つの方法を検討します。
次号ではこれらにも触れて説明したいと思います。
税務総合戦略室便り 第91号(2017年06月01日発行分)に掲載
お電話でのご相談・お申込み・お問い合わせ
全国対応いたします。お気軽にお問い合わせください。
03-5354-5222