様々な経営者の方とお話しする中で、オーナー社長が事業を行う上でいかに孤独かを感じます。従業員の方々と話し合ったとしても、最後は自分で決断しなくてはいけないのです。
口には出さなくても、悩みに悩んで経営判断をして、結論を出した後も、迷ったり不安に思うことがあると思います。
そんな時、会社の実情をよくわかってくれている人で、手助けやアドバイスしてくれる人がいたらどんなに心強いでしょう。
例えば、創業当時から事業にかかわってくれている先代社長や元番頭さん、業界の内情に詳しい同業の先輩、自分の性格まですべてわかっている親族、こういった相談役や、顧問といった存在が、まさに非常勤役員という役割のような気がします。
非常勤役員の報酬をどのくらい出してよいかというご質問を受けることもありますが、税法では明確に示されてはいません。「社会通念上不相当に高額な部分は過大役員報酬とされる」という基準があるだけです。
そうなると過去の裁決や判決をもとに類推するしかありません。
今回は、平成9年9月29日の裁決から検証します。
この事案は、親族である役員に対して支払った役員報酬が、年間300万円から900万円程度でした。従業員の給与は、520万円から780万円程度です。
結果として適正役員報酬として認められたのは、非常勤取締役の平均額から計算した116万円から180万円でした。
また別の採決事例(平成17年12月19日)でも適正役員報酬として認められたのは118万円から186万円でした。
これらの裁決事例から、非常勤役員の適正報酬が、概ね月額10万円から15万円が妥当だと言われる所以となっています。
もう少し中身を書いてみますと、
これらの主張に対して、
その他、事務所内に決まった席がないことや、仕事内容を示す具体的資料を提出することなく勤務状況も明らかにしていない。
職務従事日数は僅少で、出社日数もわずか、その他の時間は家事や子供の世話をしている、といったことを理由に過大役員報酬と認定されています。
ここまで、非常勤役員の報酬が過大と認定された裁決事例について書いてきましたが、総括的に考えると、配席図や組織図にも記載があり、客観的に経営に参画しているという本来の役員の役割をいかに明らかにできるか、類似法人との比較において、突出した金額となっていないか、金額の伸び率等が、売上、売上総利益、従業員の平均給与と比較して高い伸び率となっていないかなどが判断基準となり、当局と争った場合には、月額10万円から15万円程度が適正役員報酬とされる可能性が高いことになります。
ただし、上場企業などの大規模法人において「社外取締役」を招き入れている場合などは1千万円以上報酬を支払っている場合もありますので、一概に言えるものではないのかもしれませんね。
税務総合戦略室便り 第90号(2017年05月01日発行分)に掲載
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