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熊本地震に関して支出した費用等について(前篇)

category: 法人税その他
第90号(2017年05月01日発行分)

執筆者3

昨年3月から発生した熊本地震によって被害を被り苦労なされた会社様は多いかと思います。今回は、被った被害と復旧に要した費用の経理(税務)処理を巡る問題を取り上げます。
 熊本のA社は28年5月決算において、被害に伴い支出する金額を確定させ、特別損失に計上しました。この特別損失に計上した見積り修理費等の後年度処理を巡る問題点についてお話します。

1 災害損失特別勘定の設定について

A社は28年5月決算時点における熊本地震による被害に伴い支出する金額を、見積書や請求書を業者から受け取り、金額を確定させた上で「特別損失」勘定に災害損失として計上しました。
 この時点での経理処理としては、国税庁の「平成28年熊本地震に関する諸費用の法人税の取り扱いについて(法令解釈通達)」に則った「災害損失特別勘定への繰入額」として会計処理がなされておりますので、法人の損金として税務申告を行ったことに、何ら問題はありません。

2 後年度の処理の概要

しかしながら、震災から1年以上を経た29年5月決算においては、上記の法令解釈通達に則り、原則として「災害損失特別勘定の益金算入」処理を行わねばなりません。そして、具体的に支出した金額等をその内容に従って経理処理することになります。
  この経理処理に当たってのポイントは、

(1)まず、これらの支出した金額について、その支出内容にしたがい、
 ①原状回復のための修繕費用
 ②取壊し費用
 ③新たなる資産の取得額
に合理的に区分し、会計処理(仕訳)する必要があります。

(2)また、これらの地震災害による保険金等の支払い(益金)もなされています。保険金収入の経理処理に当たっては、保険金等で取得した資産の圧縮記帳制度を活用し、所得金額を減らすことも考慮する必要があります。

3 支出した金額の経理処理にあたってのポイント

(1)支出した金額の処理

地震後、復旧のため支出し、災害損失として経理処理した金額は、A社では、合計3千万円超となります。
 このうち①「原状回復のために支出した金額」等については、修繕費等として(損金)に計上することができます。もちろん②「取壊し費用」は費用(損金)となります。

(2)全半壊した資産の除却損失計上

一方、資産については、その被害について建物等が全半壊したという事実に基づいた経理処理を行うことになります。ここをどうするのかによって、税負担に影響が出ます。

①全部を取壊し除却した資産に替えて取得した新たな資産については、原則として減価償却資産に計上し、減価償却を通じて、各期の費用に配分することになります。したがって、支出時の損金とはならないという問題があります。
 一方、全壊ですので資産の除却損失を容易に計上できます。

②一部を取壊し除去した場合、どういう経理処理をするのか、償却資産の除却損失金額(損金)を計上することも考えられますが、償却資産台帳から除却部分どのようにして算出し、金額を確定させるのかという難題もあります。
このこともあってか、法人税基本通達第7章第7節「除却損失等」に関する取扱いにおいて、一の減価償却資産の部分除却を認めるという考え方は採られてはいません。この点が処理に当たっての大きなポイントとなります。

③第三の手法として、評価損失を計上することも可能ですが、評価損を計上した資産について支出した修繕用等は、原則として、評価損計上後の資産の使用期間の延長又は価値をもたらす資本的支出に該当することになるので、そのために要した費用は、支出時の損金とはなりません。

【参照】「平成28年熊本地震関係諸費用(災害損失特別勘定など)に関する法人税の取り扱いに係る質疑応答事例(4)修繕費用等の見積額【評価損を計上した資産と修繕費用】Q8とA8

この続き、後年度における「4.対応策」以降は次回にお話しします。

税務総合戦略室便り 第90号(2017年05月01日発行分)に掲載

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