税務総合戦略室便り

HOME >  税務総合戦略室便り >  第90号 >  国際課税の話(その11)

国際課税の話(その11)

第90号(2017年05月01日発行分)

立石 信一郎

前号に引き続き、平成28年12月8日に公表された「平成29年度税制改正大綱」における「タックス・ヘイブン対策税制(TH税制)」の改正の内容について、TH税制を構成する枠組み毎にご紹介します。

「会社単位の合算課税制度」の改正について

現行税制では「租税負担割合(実効税率)」が20%未満の国等にある「外国関係会社(内国法人等の出資が50%超)」は、「特定外国子会社等」として原則TH税制の対象となりますが、存在することの経済的合理性の基準である「適用除外基準」をすべて満たしている場合には、TH税制を適用しないとの構成をとっています。
 税制改正では「特定外国子会社等」という概念は廃止され、TH税制を発動するための基準として「経済活動基準」が規定され、「外国関係会社」は「経済活動基準」のうちいずれかを満たさない場合は原則TH税制の対象となりますが、「租税負担割合」が20%以上である場合には適用を免除することとしています。「経済活動基準」としては、現行の「適用除外基準」と同じ「実体基準」等の基準が列挙されていますが、その内容の差異については今後出される法令等の具体的な規定を見てみる必要があります。
 簡単に言えば、現行税制は「外国関係会社」がタックス・ヘイブンに所在する場合には原則適用となりますが、その存在に経済合理性があれば適用しないというものですが、税制改正では「外国関係会社」の存在に経済的合理性がなければ原則適用となりますが、タックス・ヘイブンに所在しない場合には適用しないというものですので、適用の順序が入れ替わり反対側から見るようになっただけで、実質的には大きな変更はないのではないかと思います。
 なお、税務当局から「経済的活動基準」を満たすことを明らかにする書類等の提出を求められた場合に、提出しないときには「経済的活動基準」を満たさないものと推定するとの規定が盛り込まれており、納税者側に立証責任があることとされていますので、注意する必要があります。

「一定所得の部分合算課税制度」の改正について

これについては、対象となる利子、配当等の所得の適用範囲が拡大される一方「外国関係会社」の「租税負担割合」が20%以上であれば適用が免除されることとなり、また、現在対象となる金額が1千万円以下であれば適用が免除されています(少額免除基準)が、事務負担の軽減のため、これが2千万円以下に引き上げられています。

「特定の外国関係会社に係る会社単位の合算課税制度」の創設について

今回の改正の目玉とも言える、新しく導入された枠組みであり、「外国関係会社」がペーパーカンパニー等に該当すれば、TH税制の対象とするものですが「外国関係会社」の「租税負担割合」が30%以上である場合には適用を免除することとなっています。
 具体的には、次の「外国関係会社」が対象となります。
 ①事業を行うために必要な事務所等を有していない、かつ、事業の管理等を自ら行っていないこと(いわゆる「ペーパーカンパニー」であること)
 ②有価証券、貸付金等金融所得を生ずる資産の割合が高いこと(いわゆる「キャッシュボックス」であること)
 ③租税に関する情報交換に非協力的な国等として、財務大臣が指定する国等に所在すること
 日本が実効税率20%台を目指していることから、「外国関係会社」の租税負担割合が30%以上と日本での負担よりも大きい場合には、ペーパーカンパニー等であっても敢えてTH税制を適用しないということでしょうか。

外国関係会社に係る財務諸表等の添付

税制改正により、法人税申告書に、租税負担割合が20%未満の「外国関係会社」及び租税負担割合が30%未満の「外国関係会社」(上記の「特定の外国関係会社に係る会社単位の合算課税制度」の対象となるもの)に係る財務諸表等を添付することが求められています。

これらの改正が実際にどのように適用されていくのかについては、今後出される法令、通達等の規定を検討する必要があります。

税務総合戦略室便り 第90号(2017年05月01日発行分)に掲載

お電話でのご相談・お申込み・お問い合わせ

全国対応いたします。お気軽にお問い合わせください。

03-5354-5222

PAGE TOP