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借地権課税の問題点

第90号(2017年05月01日発行分)
元国税調査官・税理士
黒崎 俊夫

相変わらずよくわからないのが借地権課税である。もちろん市販の本に書いてあることは理解できるし、税理士対象の研修等で講師の話す内容も既知のことであるが、果たして実際の現場では本に書いてあるような課税がされていないのではないかという不信からくる分からなさである。

A 権利金の認定

ここで言う借地権課税問題とは「権利金の認定」と「相当の地代」である。具体的内容は他の解説書等に譲るが、これらはその地域が借地権設定時に権利金授受の慣行がある場合にはじめて生ずるものである。問題はこの慣行がある地域がどこなのか示されていない点にある。
 東京や大阪の大都市圏や地方都市でも駅前などは、土地を貸す際に権利金を収受する慣行はあるのかもしれないが、それ以外の地域では疑わしい。 
 慣行とは地域特性のみならず建物用途、当事者の意識等によって形成されるもので明確に地域で線引きできるものではない。路線価で借地権割合30%未満の地域は慣行がないとしているが、それが50%の地域にありとする根拠にはならない。そもそも出口課税における借地権評価に使う借地権割合と入口部分の権利金授受の慣行とは全く別問題である。
 もし慣行のある地域で権利金を支払わずに借地権を設定すると、借主は権利金相当額の贈与、地主(法人)にあっては相当額の寄付があったものとして課税される、と通達にある。権利金相当額とは、更地価額×借地権割合だから大変な金額になる。それに満たない金額の授受の場合でもその差額について贈与とされる。
 従って権利金授受の慣行はないかもしれないが、万一認定課税されたら大変だ、だから念のため「無償返還の届出書」を出しておこう、という判断が働いて当然である。そしてその届出書が出ているのだから慣行があるのだろうと国税が解釈し、税務主導で本来はない慣行が形成されるといった本末転倒な世界が生じているのではないかと危惧するのである。

B 相当の地代

Aの権利金の授受がなくても相当の地代の支払いがあれば権利金認定課税はされないこととしている。
 相当の地代とは相続税評価額の概ね6%程度の地代をいう(昭和時代は8%)が、この6%は高すぎるという批判が強い。
 この率はこの通達が制定された当時の国債の応募者利回りに固定資産税等税率1・8%を加算して求めたと解説されていたが、現在の1%を割る利回りの状況では説明がつかない。さらに計算の基となる相続税評価額も当時の時価に対する路線価水準は半分程度だったが、現在の80%水準の下ではバランスを逸しているのは明らかである。
 相当の地代は法人地主の場合には、無償返還の届出書を出しても適用される。それに満たない地代では、差額について寄付金課税が生ずるのである。

ABの事項は昭和55年の法人税基本通達13によっている。
 以前法人課税のそこそこの立場の人間に聞いたことがあるが「Aの権利金の認定課税を行った例はかつてない」「相当の地代についても概ね6%の概ねの範囲は広く3%台でも概ねと理解している」「設定から期限がかなり過ぎていても無償返還届を追完させてよしとする」と言われて驚いた経験がある。それこそこうした「慣行」が法人課税にはあるのかも知れないが、この法人税通達が文言とおり執行されていないということだ。理屈は明快だが現場で運用できていない竹光のような通達は見直しするべきである。

私は国税の資産税に長らく籍を置いていた。借地権関係で確認したく法人税部門の職員に質問することも度々あったが、通達について理解できている人間は稀であった。逆に法人税職員から借地権評価について聞かれたことは全くない。そもそも問題意識が低いのだ。書店に並ぶ借地権関係の本の著者も資産税OBのものがほとんどであることからもそれがうかがえる。
 借地権課税関係の問題は、ここに書いた以外にも多く存在するし、詳細な説明を省いたので一般の方はおわかりにならないだろう。税務署や税理士の中にも「借地権」の意味を理解できていない職員が多くいるのでそれはやむを得ない。

税務総合戦略室便り 第90号(2017年05月01日発行分)に掲載

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