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元国税調査官のひとりごと 第30回 
調査審理

第89号(2017年04月01日発行分)

伊藤 徹也

以前にも一度書いたのですが、国税当局はここ数年、税務調査が税法に照らして適法に行われ、適正な処理がされているかを国税内部で検討すること(調査審理)に力を注ぐ傾向があるのです。
 今回は、その調査審理において、どのような点が検討されているかという事の内、税務処分について話したいと思います(税務当局の検討方法をご紹介しますので専門用語も出てきますが、できる限り解説をいれますのでご容赦ください)。

1 流動資産

(1)簿外預金(売上漏れなどの資金で作った帳簿に載っていない預金)の繰り入れの場合、帰属の判定(預金の真の所有者の特定)は的確に行われているか。また、簿外預金利息についても追徴しているか

(2)役員等の貸付金として処理する場合、認定利息(役員貸付金として徴収すべき利息)の計算は妥当か

2 固定資産

 簿外資産の償却費は認容しないが、その判定は適格か(売上漏れなどの資金で帳簿に載っていない資産を取得していた場合で、その資産が減価償却資産であっても、減価償却費は認められないが、間違って認めていないか)

3 流動負債

 借入金の追徴をする場合、支払利息についても追徴しているか

4 認定賞与
(売上漏れなどの資金を役員が私的に使用していた場合の損金不算入となる役員に対する賞与)

(1)認定賞与課税は適正か。対象者に誤りはないか(資金を使用した役員に対する賞与としているか)

(2)簿外資金等を費消した事実は確認できているか(個人的に使用した事実は証明できるか)

(3)役員に該当するか。特に遡及年度に注意(今は役員でも、過去においては従業員であったということはないか)

5 使途不明金・使途秘匿金

(1)支出内容について的確な事実認定がなされているか

  • 支払状況の聴き取りはできているか
  • 支出内容は、認定賞与に該当しないか

(2)使途秘匿金課税は適切か

  • 相当な理由なくその相手方の氏名等を帳簿書類に記載していないか
  • 対価性のない支出か
  • 支出の相手方を秘匿する意思があるか

 6 交際費の損金不算入

(1)接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のための支出か

  • 事業関係者に対する支出か(役員・従業員含む)
  • 認定賞与とすべきでないか

(2)損金不算入額の計算は適正か(過去の年分の限度額に誤りがないか)

7 寄付金の損金不算入

関連会社に対する資金援助、利益供与を寄付金とする場合、事実認定は的確か

  • 利益供与の事実は押さえてあるか(物証、人証が取れているか)
  • 未払寄付金に該当しないか(未払い分は否認できない)

税務調査の結果について、このようなことが税務当局内部で検討され、調査不足がある場合には審理担当者から調査担当者に対して追加の調査が指示されたり、重加算税の対象ではなく過少申告加算税の対象として処理するように指摘されたりします。
 そのような指摘を避けるために、調査担当者は時として無理な事実認定をしようとしてしまいます。
 追加調査の際に、物証がないために人証を得ようとして「質問顛末書」に署名押印を求めることがありますが、事実に基づく内容であればいいのですが「税務当局に逆らっても心象を悪くするだけで決して良いことはない」という理由で、事実と反する内容の「質問顛末書」に署名押印してしまうということがありますが、これは、百害あって一利なしですのでお勧めしません。
 また、もはや都市伝説となっているかもしれませんが「何も問題がないといつまでたっても調査が終わらないので、何かお土産となるようなことを用意しておいた方がいい」といった噂がいまだに聞こえてきますが、決してそのようなこともありません。
 今回は、税務当局がどんなことを考えているのかを知ることで、税務調査を受ける際に、何か参考になるのではないかと思いご紹介しました。

税務総合戦略室便り 第89号(2017年04月01日発行分)に掲載

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