今月は、個人型確定拠出年金制度(iDeCo)について、税制面以外のiDeCoの特徴についてメリット・デメリットを中心にご説明いたします。
通常の企業年金制度の場合には、転職等により勤務先が変わった場合には、加入していた年金制度を脱退しなければならず拠出していた掛け金が無駄になってしまう場合があります。
iDeCoの場合には、個人単位で加入しているため加入要件を満たしている限り、勤務先が変わったり自営業となった場合でも加入を継続することができます。
通常の年金制度では、運用機関や運用商品はあらかじめ決められており、自分で選ぶことはできません。iDeCoの場合には運営を委託する機関や運用する商品を自由に選ぶことが可能です(注)。例えば、運用リスクを取りたくない方は預金や国債等の確定利回りの商品を中心とし、高い運用利回りを求める方は株式やハイ・イールドの海外債券等のリスクはあるものの利回りが高い商品を中心に運用するなど加入者が運用商品を選択することができます。
iDeCoへ拠出する金額は、5千円から限度額の範囲内であれば自由に選ぶことが可能で、年1回であれば拠出額を変更することもできます。また、拠出の中断・再開も可能です。
iDeCoは、公的年金制度を補完する制度であるため20歳から60歳未満でないと加入できません。また一部の確定給付年金制度の加入者や国民年金の滞納者等は加入できない等すべての人が加入できるわけではありません。
iDeCoでは、受給資格を得るためには原則として10年間の加入期間が必要で、加入期間が10年以上の場合には、60歳から年金等の受給が可能となります。また、加入者が50歳以上の場合には、加入時の年齢によって、加入期間や支給開始年齢が異なり、例えば57歳の方が加入された場合には、63歳から年金を受給することができます。
但し、年金等の支給開始は満60歳からで、加入期間が10年を経過しても満60歳に達するまで引き出すことができません。従って、生命保険等の私的年金と異なり、途中解約することができません。
給付額が保証されている確定給付型の年金制度と異なり、iDeCoでは、運用成績によって給付額が変動します。運用に失敗した場合には、元本を割り込む(年金給付額の総額が拠出額の総額を割り込む)恐れさえあります。
従ってiDeCoで運用する商品としてどんな商品を選ぶかがiDeCoに加入する場合に最も重要であるといえます。
iDeCoは自分で拠出し運用する年金制度で、各種手数料が必要となります。加入時には、国民年金基金連合会に対して、一時金として2777円を支払う必要があるほか、運営機関によっては口座開設料として数千円が必要な場合もあります。また、毎月発生する費用としては、国民年金基金連合会に口座管理手数料として毎月103円支払う必要があるほか、運営管理機関に対して0円~700円程度、事務委託機関に毎月64円程度支払う必要があり、合計で、加入時の一時金として2777円~5千円程度、毎月の手数料として167円~900円程度(年額、2千円~1万円程度)の費用が発生します。
従ってiDeCoへの拠出金が少額である場合には税制上の優遇措置による節税額よりも手数料のほうが大きくなり節税メリットを享受できない場合があるため注意が必要です。
また、会社員の方がiDeCoに加入するためには会社から証明書(事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書)を発行してもらう必要があるのでご注意ください。
(注)運用商品は委託先の機関が取り扱っている商品からの選択となります。
税務総合戦略室便り 第89号(2017年04月01日発行分)に掲載
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