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国際課税の話(その10)

第89号(2017年04月01日発行分)

立石 信一郎

今回は、平成28年12月8日に公表された「平成29年度税制改正大綱」において「タックス・ヘイブン対策税制(TH税制)」の総合的な見直しが明らかにされていますので、2回に渡りその内容をご紹介します。
 事前のマスコミ報道では、海外子会社の課税強化策として『20%未満の税率区分を廃止し、ペーパーカンパニーであれば税負担率を問わず、課税できるように税制を改める(平成28年10月26日付 読売新聞より抜粋)』との解説もされていましたが、実際には「税負担率を問わず」というところまでは踏み込んでいません。
 税制改正の内容は簡単に言えば、現行税制の大きな枠組みは残しつつ、新しい枠組みを追加したものとなっていますので、現行税制と比較しながらご説明します。

現在のTH税制の仕組みについて

TH税制は、タックス・ヘイブンを利用した租税回避行為に対処するために創設された税制であり、同税制が適用された場合、タックス・ヘイブンに子会社等を有している内国法人や居住者(個人)は、その子会社等の所得を自分の所得として合算し、申告しなければなりません。
 このTH税制は、大きく「会社単位の合算課税制度」と「一定所得の部分合算課税制度」から構成されています。
 具体的には、内国法人等による合計の出資が50%超の子会社等(外国関係会社)が、実効税率が20%未満の国又は地域にある場合には「特定外国子会社等」として原則TH税制の対象となりますが、子会社等に事務所等の実体があったり、管理が子会社自身により行われるなどの「適用除外基準」をすべて満たしている場合には、子会社等の存在に経済的な合理性があるとして、同税制は適用されません。これを「会社単位の合算課税制度」といいます。
 また「特定外国子会社等」のうち「適用除外基準」を満たすものであっても、株式の配当、債券の利子等に係る所得(資産性所得)を有する場合には、その所得に対して同税制が適用されます。これを「一定所得の部分合算課税制度」といいます。

TH税制の改正の枠組みについて

税制改正により「会社単位の合算課税制度」については、規定振りに大きな変更がありましたが、実質的には大きな変更はなく、また「一定所得の部分合算課税制度」については、対象所得の範囲の拡大等を図っています。
 これに加え「特定の外国関係会社に係る会社単位の合算課税制度」が創設され、これによりペーパーカンパニー等に対する課税強化を図っています。

外国関係会社の判定方法について

上記の枠組みとは別に、そもそもTH税制の合算対象となる外国法人の判定方法についても改正が行われます。
 内国法人及び居住者が、合計で50%超の出資をしている法人を「外国関係会社」といいますが、これまでは50%超の出資という形式基準のみにより判定していましたが、税制改正により、出資関係は無くても契約等により残余財産のおおむね全部を請求ことができる関係にあるという実質基準が導入されます。
 また、50%超の出資関係の計算においても、例えば日本の親会社が、海外に70%出資の子会を有し、この海外子会社が、海外に70%出資の子会社(親会社の孫会社)を有している場合、現行の掛算方式では、親会社の孫会社に対する出資は49%(70%×70%)となり「外国関係会社」には該当しませんが、改正により、間接保有割合については、各法人間に50%超の保有を通じた連鎖関係があれば「外国関係会社」に該当するとしており、この事例の場合も「外国関係会社」に該当することになります。
 なお、取引を通じた外国子会社等への利益の移転に対処するための、移転価格税制においては、従来から、50%以上の出資という形式基準のほかに、事業方針を決定できるような関係、事業活動の相当部分を依存しているような関係にあるという実質基準が規定されています。しかしながら、この実質基準を認定し、移転価格課税を行ったという事例は聞いたことがありません。
(次号へ続く)

税務総合戦略室便り 第89号(2017年04月01日発行分)に掲載

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