前号では、関係会社に対して債権放棄等をした場合の取扱いについて寄附金に該当する場合があることを紹介しました。今号では、寄附金に該当するかどうかの具体的な判断基準について検討します。
関係会社に対する債権放棄等が寄附金に該当するかどうかの判断基準は、債権放棄等をしたことに『経済合理性』があるかどうかです。
国税庁ホームページによると、「経済的利益を供与する側からみて、再建支援等をしなければ今後より大きな損失を蒙ることが明らかな場合や子会社等の倒産を回避するためにやむを得ず行うもので合理的再建計画に基づく場合などその再建支援等を行うことに相当な理由があると認められる場合」をいいます。
つまり、債権放棄等について「損失負担の必要性」及び「支援内容の合理性」が必要となります。
債権放棄等をしたことに必要性があるかどうかは次の(1)から(3)の要件を具備しているかにより判定します。
対象となる子会社等とは、資本関係のある場合だけではなく、取引関係、人的関係等において事業関連性のある者が含まれます。
経営危機に陥っているかどうかの判断は非常に難しく実務上でも争いになることが多いです。経営危機に陥っているかどうかは債務超過、資金繰りが逼迫している等倒産の危機に瀕していること及び債権放棄等の支援がなければ自力再建は不可能である必要があります。
つまり、債務超過であったとしても、自力で再建できる要因があると判断された場合には、経営の危機に陥っていないということになります。
また、債務超過に陥っていなかったとしても許認可等を要する業種で一定の利益を確保しなければ許認可が取り消され、営業不可能となる場合等には、経営の危機に陥っているといえます。
子会社等を支援することにより、倒産した場合に比べて損失が軽減される場合又は支援者の信用が維持される場合等が該当します。
債権放棄等をしたことに必要性があったとしても支援内容に合理性がないと判断された場合には、債権放棄等は寄附金に該当すると認定されることになります。
支援内容に合理性があるかどうかは、次の(1)から(4)の要件を具備しているかにより判定します。
合理性があるかどうかは、支援額が必要最低限であること及び自己努力を加味している必要があります。
子会社等の自己努力を加味し、倒産を防止するために最低限の支援でなければならず、過剰な支援は認められないことになります。
必要最低限の支援である必要があることから、支援者が常に子会社等の再建状況を把握し、管理している必要があります。つまり、子会社等の状況に応じて支援額等の見直しをする必要があります。
関係者が複数いる場合おいて、支援に加わっていない関係者があるときは、その理由等に合理的理由が必要となります。
支援者が複数いる場合には、子会社等との出資関係、取引関係等の事業関連性からみて合理的な負担割合になっていなければなりません。
子会社等に対する債権放棄等について、その債権放棄等した金額を税務上損金の額に算入する場合には、寄附金に該当するかどうかの詳細な検討が必要となります。
税務総合戦略室便り 第89号(2017年04月01日発行分)に掲載
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