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海外移住と課税関係

第88号(2017年03月01日発行分)

執筆者3

日本の中小会社のオーナー代表者を務めるAさんは、日本での従来事業は安定しているものの、今後の事業発展は見込めないと判断していました。
 そこで、シンガポールや中国といった海外において新たなる事業を起こし、会社を発展させていきたいと計画した時に、中国等(現地)に単身乗り込んで新規事業の開拓、企画、立ち上げに自らが陣頭指揮をとり、携わることになります。
 その場合、どのようなタックス・プラニングを講じるのかによって、法人・個人を通じた総税負担額には大きな違いが生じることになります。
 では、どのようなタックス・プランを立てるのか?の参考を示したいと思います。

【想定図】

話を絞って、中国国内において事業展開を行う予定である場合に限らせていただきます。中国で事業展開を図る場合、橋頭保となる香港に子会社を設立するのか?はたまた、直接中国本土に子会社を設立するのかという選択肢があるかと思います。

1 役員Aは非居住者になるのか

日本の規定によると、個人が中国や香港の従事員(代表者ほか)として、一年を超える期間にわたり勤務する予定で出国する場合、「みなす規定」によって出国した時から非居住者となります。ただし、日本の非居住者判定の原則では「住所」の有無での複雑な判定方式を採用していますので、判定には注意が必要です。
 一方の中国・香港においては、方法は異なるものの基本的には183日という滞在日数を基準に居住者・非居住者の判定を行っています。
 したがって、日本の非居住者となるためには、実務的には海外子会社の従事員として働けるビザを取得した上で、出国することが何よりの早道となります。
 できれば、12月中(年内)に出国して、翌年における日本の市町村民税負担をなくすのがベターです。

2 非居住者になった場合の課税関係

個人が日本の非居住者となった場合、日本においては国内源泉所得(日本の不動産賃貸収入など)に限って、申告する義務があります。特筆すべきは、非居住者となった代表者に給与を支給した場合、20%+αという一定税率での源泉徴収で課税関係は終了します。
 国外での勤務の対価として支給された給与などの国外源泉所得については課税の対象とはなりません。
 一方、居住地国となった中国や香港での課税関係はどうなるのかというと、国によって異なります。

  • (1)香港では、日本とは異なり国外所得免除方式による課税を行っています。日本での勤務の対価として支給された給与など国外源泉所得は、課税の対象とはなりません。しかも最高税率は低く15%を上限としています。なお、個人の課税対象期間は日本とは異なり4月1日から翌年3月31日となっている点には注意が必要です。
  • (2)中国では、日本と同様に全世界所得課税方式を採用していますが、居住者である場合の課税所得の範囲は中国滞在期間によって異なっています。
    滞在期間が1年以上5年以下の居住者は、中国国内源泉所得ではない所得(国外の給与収入、不動産賃貸収入など)は、中国での申告義務はありません。また、最高税率は高く45%になるものの、外国人には大幅なフリンジベネフィットが認められております。

中国、香港ともに一長一短があります。どの点を重視するのかによって、結論は違ってきます。

税務総合戦略室便り 第88号(2017年03月01日発行分)に掲載

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